映画「給食からの革命」(有機農業映画祭ご報告)

「今の子供たちは何でも安く手に入る世界で生きている。

冬にトマト、秋にイチゴといった季節外れのものも食べられる。

世界の裏側で取った魚が1kg5ユーロ(約600円)もしない。

そうした便利さと引き換えに、環境は脅かされている。

わたしたちの食生活が地球環境異変の原因を作っている。

食生活を見直さなければ気候変動や生物多様性、水質汚染や土壌の劣化などの問題は解決できない。

30年以内に世界のフードシステムを一変させない限りこの惑星には住めなくなるだろう。」

映画はこんな語りで始まります。

そしてその解決策として示されるのが「学校給食を有機にすること」。

これは九州で食農教育に取り組む吉田俊道先生をはじめ、わたしを含むさまざまな人がだいぶ前から提唱してきたことで、日本でも最近、それに向けた取り組みが各地で見られるようになっています。

この映画では学校給食をめぐるさまざまな成功事例が紹介されていますので、その中からいくつかご紹介しましょう。

●町営農園で給食用有機食材を自給ー南仏、コートダジュール、ムアンサルトゥー

きっかけは1998年のBSE騒動だったといいます。事件に衝撃を受け、学校給食を見直す必要性を感じた町では、予算を増やさずに、食材を有機だけに切り替えるという目標を立て、4年で実現にこぎつけました。

ポイントとなったのは仕入れでした。調達を業者に依頼したものの、業者が配達してくるのは南米産の野菜なども多く、なるべく地元の食材を使いたいという町の意向に沿わなかった、と副町長は語ります。

どうしたものか、じゃあいっそ自分たちで栽培しようか、と冗談半分で言ったのがきっかけで、町営農園が誕生しました。町の所有地で農業従事者を三人雇い種子やトラクターも購入して農場を立ち上げたといいます。

そして、今では年間25t、野菜の89%までも、その農園でまかなっています。トマト、ズッキーニ、キャベツ、フダンソウ、ほうれん草、レタスなどなど…。毎日1200人分の給食が提供されています。

新鮮な野菜が提供できるだけでなく、子どもたちがその成長を間近に見て学習できるのもメリットです。学校の先生は折を見ては子どもたちを畑に連れ出し、作物やそこに来る生きものや生ごみを食べて肥料をつくってくれるミミズなどの実物を見せながら、その役割を説明しています。

常日頃そんな教育を受けている子どもたちは幼いながらも有機農業の重要性を理解しています。

「有機野菜を食べないと、地球を汚しちゃう」

「ボクたちは農薬を口に入れないで済むし、動物も農薬で死なない」

「有機農業は体や心を大事にしている。空気も。世界のみんなも。

仲間だから大切にしないと」

等々の言葉が幼い子どもたちの口から語られます。

有機食材にすると費用がかさむのでは? 多くの人が心配する点ですが、この町では逆に有機食材に切り替えながらも費用削減に成功しました。

重要なのは食べ残しを減らすこと。以前は料理の3割は捨てていたといいます。無駄を出さないようにするため、料理ごとに食べ残しの量を計り、食べ残しが多いものは、次回は作る量を減らします。そのために、残飯を捨てる際は、子どもたちは料理ごとに分別して捨てるように教育されています。

また、盛り付けを、大・中・小に分け、自分で選べるようにしました。

こうした取り組みで1人分の残飯は30gになり、残飯の8割削減を達成できた、といいます。

有機食材は上質で、すべて丸ごと使えるから無駄が出ない、と主張するシェフもいます。

映画「給食からの革命」より。エンドウ豆の冷製ポタージュ。中央の黄色い島はトマトとズッキーニのソルベ。

たとえばエンドウ豆のさやでさえ、塩ゆでし、生クリームと一緒にミキサーにかければポタージュになる、といった具合です。農薬を気にせず、皮まで全部使える、というのは確かに有機食材ならではのメリットといえます。

●菜食を採り入れる、肉を減らす/スウェーデン、マルメ市ほか

スウェーデンのマルメ市では、学校、病院、老人施設などで毎日10万人分もの給食が提供されていますが、そこで使われる食材の80%以上が有機だといいます。100%有機にすることを目指して取り組んできた結果、10年でここまで到達し、2020年には(映画は2018年完成)までには100%を実現したい、とのこと。

マルメ市が有機食材への切り替えと同時に行ったのが、肉を減らすことでした。週に2回菜食の日を設けたところ、同じ予算で給食の質は向上。割高な肉を減らすことで、予算を他の食材に振り向けることができます。

さらにもうひとつのメリットは、食生活に伴う温室効果ガスを2002年と比べ20%削減できたことでした。

家畜を育てるためには大量の穀物が使用されますが、その穀物の栽培には大量の化学肥料が使われます。その原料は石油です。穀物の輸送も、船、鉄道、トラックなどで燃料の石油を大量に消費します。肉の輸送も同様です。

また、穀物栽培から肉の生産まで膨大な量の水が使われることも問題です。地球上の限られた水資源を浪費しているのです。

地球を救うためにできることは肉を食べる量を大幅に減らすこと。

わたしが教室でいつも言っていることですが、この点も映画の中ではしっかりと語られていました。

・ポルトガルの学校では菜食料理が選択できるよう義務付けられた。

・フィンランドやスウェーデンでも給食の菜食化が進んでいる。

・フランスでも2019年以降 週1回菜食料理が提供されている。が、わずか2年間限定の政策に過ぎない。

として、映画はフランス政府にもより一層の菜食普及への取り組みを求めています。

「一等の牛から1500人分の食事を提供できる。でもこの牛に与えたトウモロコシや大豆を直接人間が食べれば、18000人分の食事になる」

として菜食のメリットを説きながらも、「環境のために我慢するのでなく、食の多様化を進めたい。肉の代わりにさまざまな種類の豆を利用すれば、バラエティーに富んだ豊かな食生活が可能になる」と語る給食の調理員もいます。

フランスでは1900年から2000年で豆の消費量が1/10にまで激減したといいます。(1人年間16kg→1.6kg)

レンズ豆、ひよこ豆、えんどう豆など(そして日本であればもちろん大豆)、さまざまな豆の味をさまざまな料理で楽しみつつ、肉を減らしていけるといいですね。

●学校給食の3割は家族農業から調達/ブラジル

世界各地で農業の大規模化が進み、小規模農家が経済的に追い詰められていくなかで、家族農業を守る試みがブラジルで行われています。それが「学校給食の3割は家族農業から調達しなければならない」という法律です。

2010年に制定されたこの法律のおかげで、疲弊していた家族農業が急激に活性化しました。

ある農家は語ります。「この給食プログラムのおかげで、生活が一変した。学校への出荷が始まった6年前、息子たちは2人とも町で働いていた。ズボンさえ買えないなら、街へ行く、と言って。しかし1年半たって、収入が徐々に増え始めた、息子も実家へ戻ってきた。今は息子たちも車も家も持つようになった。わたしはトラックも新車も買えた。学校が農産物の全量を高く買ってくれるから」

また、樹木と畑を混在させ、多様な植物を同時に育てる「アグロフォレストリー」の手法を指導することも、その政策の一環として行われているようです。

「害虫を防ぐために、農薬を使わなくてよい」

「小さな農場でも収量が多い。どの野菜にも周期があり次から次へと収穫できる」とアグロフォレストリーの効用を説く農家もいます。

ブラジルでは牧畜や餌の大豆栽培のためにアマゾンの熱帯雨林の多くが失われてしまいましたが、アグロフォレストリーの普及によって、樹木が戻ってくることを期待している、希望を持っている、と語る農家もいました。

ブラジルの学校給食プログラムに毎年10億ユーロが投入されており、4000万人の子どもたちがその恩恵を受けています。

ブラジル市のファベーラは人口の40%が貧困層という地域で、満足に食事を摂れない子どもたちも多くいます。食事を摂るにしても貧困層では加工品が多く、微量栄養素不足になっています。しかし、給食プログラムの導入によって、新鮮な野菜、果物、魚、鶏肉など豊富な種類の食材を子どもたちが食べられるようになった結果、学校の成績が大幅に向上したといいます。

「読み書きの能力が上がり、留年は減った。テストの正答率が上がった。授業態度もよくなった」と学校の先生は語ります。

「プログラム導入前は子どもたちは授業への集中力がなく、午前中はウトウトしている生徒も多かった。学習力の向上は明らかだ」と言います。

まともな食がなければ、教育も成り立たないのです。人を育てる根本が「食」なのです。

味覚や生活習慣の固まる前の子どもの時期に、まともな食を食べること、これこそが人格形成の基礎といえます。それを踏まえ、給食の持つ意義の大きさをあらゆる親御さんに、そして政府関係者にしっかりと認識していただきたい。そして、有機給食への取り組みを積極的に進めていただきたいものだと思います。

映画の最後はこう締めくくられています。

「あなたも食べ方を変えてみませんか。

地元の有機農産物を買う。

動物性食品を減らす。

食材を最大限に生かす。

生ごみを肥料にする。

有機食材の給食を首長に求める」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大人には問題解決の責任がある

子どもたちの将来を奪ってはいけない