(あれ? こんなもの頼んでないはずなのに……)
生協が運んできたのは「サラダ油」の大型プラボトル。裏にはこんなラベルが。
どうやらわたしは「国産なたね油」を注文するつもりで注文用紙の隣の欄の「サラダ油」にマークしてしまったようです。原材料欄のなたね油も、大豆油も、とうもろこし油もすべて「遺伝子組み換え不分別」。
この「遺伝子組み換え不分別」という言葉の意味、みなさんは正確におわかりですか?
(「不分別」ってことは分けてないってことだから、混じってるんだろうな)というところまではわかるでしょう。では、遺伝子組み換えのものがどのくらいの割合で混じっていると思いますか? 1割くらい? 3割くらい? なんとなくだけど、半分以下なんじゃないかな……なんて、思っていませんか?
実は、ほとんどが遺伝子組み換え、少なくとも9割、おそらくは99%以上遺伝子組み換えと思っていいのです。
遺伝子組み換え作物から抽出された油が健康上害があるかどうかははっきりとはわかりませんが、遺伝子組み換え作物を直接食べるとさまざまな健康被害が起きることは、動物実験などで確かめられています。
仮に油が無害であるとしても、遺伝子組み換え作物の栽培は除草剤による環境汚染や遺伝子汚染などさまざまな環境問題をもたらし、また農家の権利の抑圧につながりますので、やはり遺伝子組み換えの油は買いたくないものです。
しかし、一体なぜこんな表示になるのでしょうか? ほとんどが遺伝子組み換えであるならば、はっきりと「遺伝子組み換え」と明記してほしいですよね?
これには日本の表示のしくみが関係しています。
「遺伝子組み換えでない」と表記するためには、IPハンドリング=分別流通管理がなされていて、それが証明書によって証明できることが条件となります。また、意図せずして遺伝子組み換えのものが混じってしまう場合でも、それが5%以下であることも条件です(※表示法の改正によって「5%」が「不検出」へと変更になる予定です)。
一方、「遺伝子組み換え」と表示するためにも、分別流通管理されていることが条件となります。
しかし、分別流通管理するためには、農家から倉庫、倉庫から港、港から船などへ作物が移動する際、いちいちIPハンドリング証明書の発行が必要になり、その分手間もかかればお金も余計にかかることになります。多くの消費者は「遺伝子組み換えでない」食品を求めており、そのほうが高く売れるため、「遺伝子組み換えでない」と表示するためには、流通業者も多少の出費を許容します。
しかし、「遺伝子組み換え」と表示することによるメリットはまずありませんので、業者はそんな表示をするために、わざわざ分別流通管理などしません。
で、分別流通管理をしないとどうなるかというと、これは規則で「遺伝子組み換え不分別」と表示しなければならないのです。
つまり「遺伝子組み換えでない」作物は、高く売るためにきちんと分別流通管理されているはずなので、分別流通管理されていないということは、すなわちほとんどが遺伝子組み換え、と推測することができるのです。
実際に、消費者庁の委託を受けて一般財団法人食品産業センターが国内外の港湾倉庫などで行った調査(2017年)では
「不分別」大豆のうち、遺伝子組み換えの割合は最大で118%(※)最小で88%、平均105%
「不分別」とうもろこしのうち、遺伝子組み換えの割合は最大で488%(※)最小で199%、平均304%となっています。
(※ひとつの作物に、いくつもの特性を持つ遺伝子が組み込まれている場合、そのすべての特性を数えてしまうため、100%を超える数字となります)
「遺伝子組み換え不分別」≒「遺伝子組み換え」と考え、見かけたら買わないようにすることをおすすめします。
ただし、油には表示義務がありませんので、スーパーなどで見かけるサラダ油はほとんどが遺伝子組み換え(原料がなたね=キャノーラ、大豆、コーン、綿実の場合)と考えましょう。
国内ではまだ遺伝子組み換え作物の商業的な栽培はされていませんので、普段使いの油には、国産なたね油をおすすめします。
「なたね油は比較的酸化しにくいうえ、必須脂肪酸のオメガ3とオメガ6の割合も適正で、炎症を起こしにくい体質にしてくれます。皮膚炎のある人などは特におすすめですよ」
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