消費者庁と農新水産省がすべての加工食品に原産国表示を義務付ける方向で検討を進めています。
これまで加工食品で原産国表示が義務付けられてきたのは、緑茶飲料などの22食品とうなぎのかば焼きなどの4品目のみ(詳細はこちら http://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-201508_07.pdf)。対象品目が少なすぎるうえ、どんな品目に表示義務があるのか、その理由は何なのかもわかりにくく、消費者にとっては不親切なものでした。
11/2に有識者検討会で大筋了承された今回の案では、
●すべての加工食品を対象に原産国表示を義務付ける
●製品に占める重量が最も大きい割合の原材料の原産国を表示する
●原産国が複数ある場合は重量の割合が多い上位3か国程度まで記載する
こととしています。
ただし、メーカーによっては、天候不順などの影響で仕入れ先が変わることもあり、そのたびに包材を印刷し直すのは大変だ、という懸念に応え、4種類の「例外表示」を認める、という案になっています。
●①可能性表示
例「大豆(米国またはカナダまたはブラジル)」
過去の実績に基づき、数か国を記載するもの。これなら不作で輸入が止まった国があっても表示を変更する必要がなくなります。
②大くくり表示
例「大豆(輸入)」
3か国以上を列記するのは煩雑なので、その場合はこのように大きくくくることも認めています。
③大くくり表示と可能性表示
例「大豆(輸入または国産)」
3か国以上から輸入することも国産のものもありうる場合には、このような表示になります。
④中間加工原材料の製造地表示
例「小麦粉(国内製造)」アメリカ産の小麦を国内で製粉した場合にはこうなります。
また、こうした例外表示による情報不足を補うものとして、QRコードによる情報発信が努力義務として掲げられています。包材に印刷されたQRコードを携帯電話で読み取ることで、インターネットを通じて、原産国がわかるという仕組みです。この方法であれば、原産国が変わるたびに包材を印刷し直す必要がなくなります。
この案の例外表示については検討会の中でも反対意見があるといいますが、それも当然、とわたしは思います。
まず③の表示「輸入または国産」です。これを表示することに一体なんの意味があるというのでしょう? 輸入でも国産でもない食材なんてどこにもありません。これでは何も表示しないのと同じことではありませんか。
④にもわたしは大反対です。なぜなら小麦粉の品質は製粉の工程よりも、小麦の産地のほうがはるかに大きく影響するからです。
アメリカでは小麦を早く収穫するために、収穫直前の小麦に除草剤ラウンドアップをかけて早く枯れるようにするのが一般的です。そのうえ船便で運ぶ間にカビなどが生えないよう、防カビ剤、抗菌剤、殺虫剤などをかけてから輸送します。そのため、アメリカ産の小麦は国産小麦と比べ、人体に毒となる成分がはるかに多く含まれているのです。
これなどは外国製品を国産品であると消費者に誤認させるための表示としか思ません。TPPでの外国産食品の輸入が増えることに備え、消費者が国産品をきちんと選ぶことができるようにする、というのが、この加工食品の原産国表示義務化の大きな目的だったはずですが、これではその目的の達成にはほど遠いといえるでしょう。
QRコードで情報を補完するというのはいいアイディアのようにも思えますが、そこまでする人はわずかでしょう。また、食の安全に敏感な消費者が必ずしも携帯電話を使いこなせず、得たい情報が得られないというケースも出てきそうな気がします。
こんな例外表示ではいかん!と思う方、消費者庁や農水省に意見を提出してみてはいかがでしょうか(まだこの案に対するパブリックコメントは募集されていないようです)。
消費者庁のサイトも調べてみましたが、意見提出できるような宛先は見つけられませんでした。
念のため、消費者庁大代表 電話:03-3507-8800
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