健康

小麦は体に悪いってホント?

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近年、健康志向の人の間で、小麦(またはグルテン=小麦たんぱく)が体に悪い、という説が流行っていますが、わたしはこれに異を唱えています。小麦の悪影響と思われている諸症状の真の原因は、多くの場合、小麦に散布される農薬、そしてパン酵母ではないか、というのがわたしの考えです。

詳しくご説明しましょう。

小麦悪玉説によれば、小麦は品種改良を積み重ねる間にたんぱく質が複雑化しすぎて、古代の自然な小麦とはもはや別物になってしまい、現代人の健康にさまざまな悪影響を及ぼしている、といいます。

例としては、過食、肥満、腹部膨満感、リーキーガット症候群、アレルギー体質、炎症促進などがよく取沙汰されるようです。

小麦製品を完全に断って体調が劇的に改善した、という人もいるようなので、わたしも試してみたことがありますが、1か月ほど試して何の変化も見られませんでした。

わたしが小麦を食べる場合は、オーガニックの小麦粉を使って自分で料理するか、あるいは国産小麦のそうめんやうどんやパン(これは必ずしもオーガニックとは限りません)を買うか。あるいはオーガニックのスパゲッティを買う場合もあります。これらを食べている分には何の問題も感じません。

ただ、輸入小麦のパン(国産小麦と銘打っていないものは輸入小麦を使っていると思っていいでしょう)を2~3回続けて食べると、必ずといっていいほど、上唇が切れてきます。上唇は小腸の状態を反映する場所であり、これは小腸の不調を表しています。パンやクラッカー、クッキーなど歯にくっつくものは、小腸の腸壁にもへばりついてしまう、とマクロビオティックでは言われており、その悪影響である、と考えられます。しかし国産小麦パンではこの現象が起こる確率が下がるので、外国産小麦に含まれる成分が関係していると推測できます。国産小麦には含まれず、外国産小麦に含まれる成分……それはポストハーベスト(収穫後)農薬とプレハーベスト(収穫前)農薬です。

ポストハーベスト農薬でガンに?

日本で流通する小麦の半分以上はアメリカから、約3割はカナダから、残りはほとんどオーストラリアから輸入されてきますが、長い船旅の間にカビが生えたり虫が湧いたりしないよう、防カビ剤や防虫剤などが船倉の小麦に大量に噴霧されます。

船に小麦を積み込むところ

映画でその光景を見たことがありますが、巨大な船倉に流れ込んだ大量の小麦の上に、ポストハーベスト農薬が真っ白な霧状になって、たっぷり、たっぷり、まんべんなくたっぷりと噴霧される……その想像以上の大量さに驚いたことでした。船の作業員が、自分がガンにかかったのは、小麦にかけるポストハーベスト農薬を吸い込んだからだ、と主張していたのも印象に残りました。(映画はたしか「世界が食べられなくなる日」)

たしかに、ポストハーベスト農薬として使用されるマラチオンなどの有機リン系農薬には発がん性が指摘されていますから、そうした船で働く人がガンを発症したとしても何の不思議もありません。また、発ガン性の他にもマラチオンには神経毒性、精子を減少させる環境ホルモン作用などが指摘されています。

プレハーベスト農薬で不妊に?

アメリカなどで栽培された小麦が国内で消費される分には、こうしたポストハーベスト農薬は必要ないかもしれません。しかし、アメリカなどではプレハーベスト(収穫前)農薬として、わざわざ除草剤をかけて枯らす、という農法が近年一般的となっています。放っておいても収穫期になれば小麦は枯れてくるのに、除草剤をかけて早く枯らせば早く収穫できる、雨に当たってカビが生えるのを防げる、などのメリットを狙ってわざわざ散布するようです。

その際使われる代表的な除草剤が、“ラウンドアップ(主成分グリホサート)”です。ラウンドアップはかつてモンサント社(現在はバイエルが買収)の看板商品として知られた除草剤で、遺伝子組み換え作物とセットで広く南北アメリカ大陸で使用されるようになりました。しかし、アメリカではグリホサートを主成分とする農薬を仕事で噴霧したことで悪性リンパ腫になったと主張する人が訴訟で勝訴する例が相次ぎ、ヨーロッパでは使用禁止にする国も多くなっています。2015年にはWHO傘下の国際がん研究機関(IARC)がグリホサートを「ヒトに対しておそらく発ガン性がある」物質(グループ2A)として指定したこともあります。

アメリカ産小麦はこの悪名高い“ラウンドアップ(主成分グリホサート)”を収穫前に噴霧されており、それは小麦粉にも残留しています。そのため日本で市販されているさまざまな食パンからもグリホサートが検出されています。特に残留しやすいのは全粒粉です。本来であれば栄養価の高い全粒粉ですが、残念ながら外側ほど農薬も残留しやすいため、精白された粉と比べて高濃度で検出される例が多いのです。(参考:農民連分析結果 グリホサート(除草剤の成分)輸入小麦使用の食パンから検出(2019年4月22日 第1357号) (nouminren.ne.jp)

グリホサートにも発ガン性がある他、ミネラル吸収を阻害する、不妊の原因になる、神経毒性があり発達障害の原因になる、解毒能力を衰えさせる、腸内細菌にダメージを与える、腸壁を傷つけ消化吸収能力を衰えさせる、などの研究があります。

パンやクッキーが歯にくっつくように、パンが腸壁にくっつくとすると、そこに含まれるさまざまな農薬成分もともに滞留して腸壁を傷害し、そのサインとして上唇が切れるのではないか、だから輸入小麦のパンを食べたときにだけそうなるのではないか、というのがわたしの推測です。

実際にガンになるかどうかは別として、「発ガン性がある=健康に悪い」と大まかに捉えておけばよい、とわたしは考えています。その影響が腸だけではなく、全身に及んで、他にもさまざまな諸症状を引き起こしているのではないでしょうか。

過食・肥満に関しては、グリホサートによるミネラル不足の影響もあり得るとわたしは考えます。グリホサートはミネラルをキレート化(カニのはさみのようにがっちりとはさみ込んでしまう)して腸から吸収できなくしてしまう作用がありますが、ミネラル不足は時として過食を招くことがある、というのがわたしの考えです。詳細なメカニズムは不明ですがミネラル不足によって血糖値の調節機能が衰える、というのがミネラル不足に陥った経験のあるわたしの実感で、血糖値が安定しないと過食に陥る傾向があるのを感じています。ミネラルを補給しようとして手当たり次第に食べたくなってしまうのかもしれません。小麦の害として挙げられる過食やそれによる肥満はこのグリホサートによるミネラル不足の影響である可能性もあります。

パンは腸内環境を乱す?

さまざまな小麦製品の中でも特に問題が多いのはパンである、とわたしは考えています。先ほど述べた「腸にくっつく」問題の他にも、パン酵母は真菌であることが問題です。「腸内細菌」という言葉をよく聞くと思いますが、「真菌」と「細菌」とは別の生物であり、腸内細菌100に対し、真菌1程度の割合で存在するのが正常と言われています。しかし、何らかの原因で細菌が大量に死滅すると、その間隙を縫って真菌が異常増殖してしまうことがあります。

その最大の引き金は抗生物質の服用です。抗生物質は細菌を殺す成分で、細菌が原因の病気には絶大な効果を示しますが、風邪のようなウイルス性の病気には何の効果もありません。それにも関わらず、日本の病院では非常に安易に抗生物質を処方します。抗生物質を服用すると腸内細菌が大量に死滅するため、下痢を起こす人も多くいますし、仮に下痢にならなくても、細菌が死んだ隙間を埋めるように真菌が大増殖してしまうことが多いのです。そしてその真菌が、腸にさまざまな問題を引き起こします。

たとえば、

①お腸の不調

真菌が増えすぎると腸内で過剰な発酵が起こり、ガスがたまる、腹部膨満感(お腹が張って苦しい)、ガスがやたら出る、などの原因になります。また、腸壁に突き刺さるような特殊な腹痛を感じる人や、見た目でわかるほどお腹が膨らんでしまう、という人もいます。

②真菌の出す酵素が腸壁を壊す→アレルギー体質に

真菌は酵素で腸壁を溶かして食い込み、ツタがはうように腸壁に拡がっていくため、腸が炎症を起こします。腸粘膜を守る抗体を壊す作用もあるため、腸粘膜が弱り、リーキーガット症候群(漏れるべきでない成分が漏れてしまう状態)に陥ります。これによって未消化のタンパク質が血液中に漏れ出すと、体はそれに対する抗体を作り出し、それがさまざまなアレルギーの原因になります。

③免疫トラブルを起こす→自己免疫疾患等多くの病気の原因に

カンジダというのはごくありふれた真菌で誰の体にも多少は存在しているものですが、それが増えすぎることで免疫系にトラブルが起きると考えられます。感染を防ぐため体はカンジダに対する抗体をつくりますが、それが増えすぎると、自分の脳、腎臓、膵臓、胸腺、肝臓などまでも攻撃するようになります。本来なら外敵(カンジダ)を攻撃すべき抗体が、自分を攻撃してしまう、すなわち自己免疫疾患です。攻撃する場所によって、精神症状の悪化、低血糖や糖尿病、その他もろもろの病気の原因になっている可能性があります。また、小麦アレルギーも、小麦たんぱくの一種グリアジンとカンジダの構造が似ていることが原因で起きている可能性があります。

他にも真菌の作り出す成分にはさまざまな害があります。

上述したように細菌100に対し真菌1程度の割合で存在している分には問題ないのですが、この割合が増えてくるとさまざまな問題が起こってきます。

真菌の増殖の引き金となる最大の原因は抗生物質の服用ですが、その次くらいにパンの食べ過ぎがあるのではないか、とわたしは考えています。

細菌は細菌の餌になり、真菌は真菌の餌になるからです。つまり、ヨーグルトや納豆などから摂り入れた乳酸菌・納豆菌などの細菌は腸内細菌の餌になり、逆にパン酵母、キノコ、塩麴などから摂り入れた真菌は腸内の真菌の餌になるのです。

抗生物質がなかった時代には、パンを食べても今のような問題は起きなかったかもしれませんが、現代では、抗生物質を一度も飲んだことがないという人はまずいないでしょう。一度でも抗生物質を飲むと、腸内細菌が大量に死滅し、そこに真菌が増殖します。その素地があるところでパンを食べると、パン酵母によってさらに真菌の増殖が加速するのです。

こうして見てきたように、小麦の害とされている過食、肥満、腹部膨満感、リーキーガット症候群、アレルギー体質、炎症促進などは、実は小麦にかけられる農薬や代表的な小麦製品であるパン酵母の害である可能性が十分にあります。

「グルテンフリー」って健康にいいのかな、などと漠然と思っている人は、本当にそれが自分にとって必要なのかどうか、自分の体で実際に試してみることをおすすめします。

まずは半月くらいでいいので小麦断ちをしてみましょう。体調はよくなりましたか? 仮に体調がよくなったとしても、それはもしかすると、以前食べていた小麦製品に含まれていた農薬や、パン酵母が原因だった可能性があります。

今度はパンは食べず、オーガニック小麦でつくられた製品だけを摂ってみて、また体調の変化を観察してみてはどうでしょうか。小麦断ちをしたときと比べて悪化しますか? 

情報を鵜呑みにせず、自分の体できちんと確認してみることをおすすめします。

「本当に小麦断ちが必要な人は、ごく一部ではないか、というのがわたしの推測です。ほとんどの人は、うどんやそうめんなど、日本の伝統的な小麦製品までやめる必要はないと思いますよ」

美絵似顔絵イラスト
自然療法家 安田美絵

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