問題だらけの糖質制限ダイエット
第2回―たんぱく質の食べ過ぎは腎臓の負担
糖質は「炭素(C)」「水素(H)」「酸素(O)」という3つの元素だけからできています。
糖質が体内でエネルギー源として燃やされた後には、この3つの元素から2つの物質が生まれます。誰もが知っているその2つの物質とはなんでしょうか。
それは……
CO2=二酸化炭素 と、H2O=水 です。
CO2は呼気として、H2Oは尿や汗として排出されます。とてもシンプルな排出法です。
しかし、たんぱく質は、糖質と違って、「窒素(N)」を含んでいます。そのため、エネルギーとして燃えた後のカスも、二酸化炭素と水だけでは済まず、有害な毒物であるアンモニア(NH3)が生成されてしまいます。
それを無毒化するために、肝臓でアンモニアは尿素( CO(NH2)2 )に作り替えられますが、それをろ過して排出するために腎臓にも余分な負担がかかります。
たんぱく質は「体の材料になるから大事」「太らない」だから「いっぱい食べるほうがいい」などと思い込んでいる人が多いのですが、腎臓病になると医師からたんぱく質の摂取量を厳しく制限されることからもわかるように、たんぱく質の過剰摂取は腎臓にとって大きな負担なのです。
糖質制限でご飯の代わりに、肉、魚、乳製品、大豆製品など、たんぱく質のおかずばかり食べることは、その点大いに体に負担がかかることを知っておかねばなりません。
では、適切なたんぱく質摂取量はどの程度なのでしょうか。
それに関しては諸説ありますが、厚労省と農水省が共同で作成した「食事バランスガイド」によれば、活動量がふつう以上の成人女性で、1日に3~5単位の主菜(たんぱく質を多く含むおかず)を摂ることが推奨されています。
1単位は卵なら1個、肉や魚なら30g程度、納豆なら1パック、木綿豆腐なら100g(1/3丁程度)、油揚げなら1枚くらい。(どれも含有するたんぱく質の量が6g前後となります)。さんま1匹は100g以上ありますので、頭を食べないことを考えても3単位はあるとみていいでしょう。ケンタッキーフライドチキン1ピースは、骨を除いた可食部平均が87gだそうですから、これだけでも約3単位となります。3単位といえば、1日のたんぱく質必要量を満たしてしまう数字です。
3食に分けてバランスよく摂ろうと思えば、例えば朝食に納豆1パック、昼ご飯に油揚げ1枚、夕ご飯に豆腐を1/3丁、あるいは卵1コ。このくらいでも合計3単位となり、十分に足りるのです(これは女性の場合で、男性はもう少し多めになります)。夕ご飯のおかずをさんま1匹に替えた場合で、1日合計5単位となります。
しかし、もし主食のご飯やパンを食べない場合には、これらのおかずだけでは到底満腹にならないでしょう。満腹するためには、この2倍も3倍も、あるいはそれ以上にたんぱく質系のおかずを食べることになります。その結果腎臓に負担がかかると、徐々に体力が落ち、気力もなくなり、疲れやすくなってきます。「肝腎要(かんじんかなめ)」という言葉があるように、腎臓は健康の要なのです。
主食をまったく食べないような極端な糖質制限ダイエットをすると、常に眠気に襲われるようになったり、倦怠感や無気力に悩まされるようになるといわれます。その原因を糖質不足からくるエネルギーの欠乏とみる人もいますが、それは違うでしょう。人間の体には「糖新生」という働きがあり、たんぱく質から糖を作り出し、そこからエネルギーを得ることも可能だからです。眠気や疲労感、倦怠感の原因は、エネルギー不足ではなく、腎臓への過剰な負担が主たる原因であるとわたしはみています。
「糖質はいわば、クリーンエネルギー。
それに比べてたんぱく質は、燃えるときに
真っ黒い煤を出す石炭みたいなイメージ。
だからエネルギー源として利用するのでなく
体の材料になる分だけ摂取するほうが、
体の負担を少くできますよ」
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