F1≠遺伝子組み換え≠自殺する種子。混同しないで!

タネに関する間違った記述をネット上で見かけることがよくあります。「遺伝子組み換え作物からタネを採ってそれをまいても、芽が出ない」とか、「F1を育ててタネ採りしても、そこからは芽が出ない」とか、「遺伝子組み換え作物はみなF1である」などなど……みな間違いです。10年くらい前から、見かける度にその間違いを指摘していますが、一向になくなる気配がありませんので、一度このサイト上に情報をまとめておこうと思います。

●タネをまいても芽が出ない、ってことあるの?

作物が実を結ぶのにもかかわらず、その実をタネとしてまいても芽を出さない。そのような作物を遺伝子組み換えによってつくり出すことは可能です。そうした遺伝子組み換えの技術を「ターミネーター技術」または“Genetic Use Restriction Technologies”と呼びます。この技術でつくられたタネは「自殺する種子」とも呼ばれます。「自殺する種子」をまくと、第一世代では実を結ぶのですが、それをまいても発芽しない…つまり第二世代は育たないようにできています。もし、このような作物が栽培され、その花粉が風にのって広まってしまえば、その種の絶滅につながりかねません。生態系にも、人類の食料にも大打撃を与える可能性のある非常に危険な技術であるとして、2000年の国連生物多様性条約締約国会議(CBD)において禁止が決められ、2006年の同会議でも再確認されています。実験室以外で、世界のどこでもこうした作物が栽培されているという事実はありません。

 

●F1って何?

F1(エフワン)とはFiliale1の略で、異なる品種を掛け合わせてできた雑種第一世代のことを指します。
 学校で習った「メンデルの法則」を思い出してください

上の図のように雑種第一世代では、優性遺伝する形質(優れた性質という意味ではなく、遺伝しやすい性質ということです)だけが現れますが、第2世代になると、劣性遺伝(遺伝しにくい)の要素も現れてくるため、形質がバラバラになってしまいます。おじいちゃん似のもの、おばあちゃん似のもの、そのどちらとも違うものが現れてきます。つまりF1のタネをまくと、きれいに揃った大きさや形の実が採れるけれども、そこからタネを採って第2世代を育てると、大きさや形がバラバラになってしまうのです。

現代のように遠い地方から都会まで野菜を運ぶためには、形や大きさが揃って箱にきれいにおさまるということが非常に重要なポイントになってきます。そのため、第2世代で大きさや形がバラバラになってしまうと、売り物にならなくなってしまうのです。

自家採種をしても、そこから育てた作物では売り物にならないため、農家は毎年種苗会社からタネを買わざるを得ません。つまり、F1は種苗会社が毎年農家に確実にタネを買わせるための手法、利益確保の手段として機能しています。

しかし、あくまでも大きさや形がバラバラになってしまうだけであって、第2世代のタネが採れないとか、タネをまいても芽が出ないというわけではありません。そこは誤解のなきようお願いします。

ただし、F1をつくる過程で「雄性不稔」を利用している場合には、タネができることはありません。「雄性不稔」とは、突然変異によって花粉が付かなくなってしまった株のことを指します。異なる品種を掛け合わせる際には必ずその下準備として「除雄」(=花粉が付く雄しべを取り除くこと)という作業が必要になりますが、昔はこれをすべて手作業で行っていたため、品種の交配は非常に手間のかかる作業でした。この作業を効率化するためにさまざまな技術が開発されており、そのひとつが突然変異でできた「細胞質雄性不稔」株を利用する、というものです。雄性不稔は細胞のミトコンドリアの異常によって起こる一種の奇形で、花粉ができないという性質が母方の家系(雌しべを利用する側)にずっと遺伝していきます。もともと花粉ができないため、雄しべを取り除く「除雄」の手間が省けて便利だとされ、種苗会社に利用されるようになりました。

たとえば、アブラナ科である大根には稀に雄性不稔株が見つかるため、キャベツのF1をつくるにも、まず雄性不稔の大根とキャベツとをかけあわせます。最初はキャベツとも大根ともつかない野菜ができてしまいますが、何度も戻し交配を重ねるうちにキャベツらしくなってきます。最後はその雄性不稔株と人間にとって都合のよい形質をもったキャベツとをかけあわせてF1をつくるのです。

このような雄性不稔を利用してつくられたF1品種の場合には、花粉ができないので、タネが実を結ぶこともありません。しかし、すべてのF1品種がこの「雄性不稔」を利用してつくられているわけではないため、F1のすべてが実を結ばないわけでは決してないのです。

●遺伝子組み換えはタネ採り可能?

遺伝子組み換えとF1を混同している人もいるようですが、これは全く違う技術です。F1は、Aという品種の雌しべに、Bという品種の雄しべから取った花粉をつければつくれるのですから、小学生でもやろうと思えばつくることができます(それが優れた品種になるかどうかは別の話です)。

一方、遺伝子組み換えは大学の実験室のような設備がなければつくることはできません。Aという生物の遺伝子を、Bという別の生物の遺伝子の中に組み込む、というものです。たとえば、細菌の遺伝子を大豆に組み込んだり、サソリの遺伝子をキャベツに組み込むなど、動物と植物の壁さえ超えた異種の生物の組み合わせが可能です。

遺伝子が組み換えられ、その遺伝情報は子孫にも伝えられていきます。ですので、遺伝子組み換え作物からタネを採ってまけば、同じように均質な遺伝子組み換え作物が育ちます。この点もF1とは明確に違います。

これは毎年農家にタネを買わせたい種苗会社にとっては、弱点ともいえる要素です。それを克服するため、つまり農家に毎年タネを買わせるために種苗会社が考えたのが、遺伝子に特許を取り、知的所有権を主張し、契約書で農家を縛る、という手法でした。

遺伝子組み換え種子の販売で最大手だったモンサント社(今はバイエルンに吸収合併)が農家と交わす契約書には以下のような内容が含まれています。

・自家採種は禁止

・毎年モンサントから種を買う

・農薬はモンサントのものを使う

・毎年ライセンス料を払う(40ドル/ha)

・守秘義務

・モンサントポリスの立ち入りを許す

もしも遺伝子組み換えのタネから発芽しないとか、あるいは2世代目はバラバラになってしまって売り物にならない、などの事情があれば、上記のような契約書で自家採種を禁止したり、毎年のタネの購入を義務付けたりする必要はありません。モンサント社がこのような契約を強要するのは、遺伝子組み換え作物のタネからは本来自家採種が可能であり、その第2世代も第1世代同様の品質のものが育つからです。自社の利益を確保するために、農家が本来できることに制限をかけているのです。

遺伝子組み換え作物であって、同時にF1品種である、というものも全くないわけではありませんが、全体に占める割合はごくわずかです。

少々ややこしいですが、ご理解いただけましたでしょうか?

まとめると…

ターミネーター技術(自殺する種子):第2世代のタネは芽を出さない。

遺伝子組み換え:第2世代も第1世代とおなじ性質の作物が育つ。

F1:第2世代も育つものの、品質がバラバラになってしまうため、売り物にならない。

となります。

「遺伝子組み換え食品は摂取を避けることをおすすめしますが、F1はそれほど怖れる必要はないのでは、とわたしは思っています。その根拠についてはまた後日詳しくご説明しますね

美絵似顔絵イラスト
自然療法家 安田美絵
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