緊急事態宣言再発令で、世間では感染予防にやっきになっているようですが、どんなに気を付けても蔓延するウイルスを完全に遮断するのは至難の業です。経済活動の停止を続ければ病気の死者よりも倒産による自殺者のほうが増えてしまいます。ウイルスが体内に入って来ても、それが増殖しなければ、何の問題もないのですから、その対策にこそ注力しましょう。ウイルスや細菌が、体の中で増殖したり悪さをしたりしないように、封じ込めてしまう力-それが人間が持っている免疫力です。
今さらですが改めて、免疫力を高める方法を食事面と行動面との両方から、いくつかご紹介したいと思います。まずは食事から。
食事で免疫力アップ
〇「まごわやさしい」-腸内環境を整える
人間の免疫細胞の7割は小腸に存在するので、免疫力向上のためには腸内環境を整えることが基本となります。腸内にはいろいろな細菌がいて、善玉菌2割、悪玉菌1割、日和見菌7割程度が最良のバランスと考えられています。しかし肉・卵・乳製品などを多く摂ると、それらを好む悪玉菌が増えてしまい、このバランスが崩れがちです。
腸内環境を整えるためには善玉菌の餌になる食材を食べること。善玉菌の餌は食物繊維とでんぷんです。それを豊富に含む食品を摂ろうと思ったときに意識してほしいキーワードは「まごわやさしい」です。
「ま」=豆
「ご」=ごま
「わ」=わかめなどの海藻類
「や」=野菜
「さ」=魚
「し」=しいたけなどのきのこ類
「い」=いも類
これは食物繊維やでんぷんを豊富に含む食材(魚を除く)であると同時に、日本人が伝統的に食べてきた食材のバリエーションでもあります。それぞれの民族が伝統的に食べてきた食材こそがその民族の体質に合っていて、それを食べることで健康が実現できます。「まごわやさしい」を意識して、できれば1日に全種類を少しずつ食べられるとよいですが、それが無理でしたら、せめて1週間を通して一通り食べるようにしましょう。
※マクロビアンの方へ:病気治しには一時的に菜食にするのが効果的ですので、そうした場合には魚を抜いてももちろん構いません。ただし、それを長期間続ける必要はなく、健康になった後は、1週間に200g程度は魚を食べるほうが、陰陽のバランスもとりやすくなります。体質次第ではもっと多く摂っても大丈夫です。
〇玄米―ビタミンB群とLPSで免疫力強化
玄米から糠(ぬか)をすべて削り落とすと白米になるわけですが、「糠(ぬか)」という字は、この部分を食べてこそ健康になれる、ということを表した漢字です。玄米が健康にいいことはそれほど古くから知られていました。
免疫機能の維持に欠かせないビタミンとしてB1、B6などがありますが、玄米のビタミンB1は白米の8倍、ビタミンB6は約10倍、と桁違いに豊富なのです。
近年ではリポポリサッカライド(略称LPS)という成分が免疫力を高めるとして脚光を浴びていますが、玄米にはこの成分も豊富であることが明らかになっています。LPSは免疫細胞の一種であるマクロファージを活性化させ、マクロファージは病原体を貪食してその増殖を防ぎます。糠の中でも、外側に近い部分ほどLPSの濃度は高くなります。
また、玄米は食物繊維も非常に豊富で、整腸作用も抜群です。
こうしたことからも、またわたし自身の体験に照らしてみても、玄米は免疫力の強化に非常に役に立ちます。毎日玄米を食べていた頃は、病弱なわたしなのにまったく風邪をひきませんでした(ただしわたしの場合は玄米ばかり食べていると過食になってしまうので、今はやめているのですが)。
体質的に玄米が合わないひともいます。その場合、毎食玄米にしなくても、夜ご飯だけ、あるいは週末だけ玄米、というのでもよいでしょう。玄米がどうしても嫌いな人にはほとんど白米と同じ感覚で食べられる7分づき米をおすすめします。
〇れんこん―肺を強化
れんこんは古くから「精が付く」食材であるとされ、また肺に顕著な効能があることもマクロビオティックではよく知られています。免疫力を高めるLPSがれんこんに豊富に含まれることも明らかになっています。マクロビオティックではれんこんの皮や節が特に薬効が高いと考えられてきましたが、実際に皮や節に特に豊富にLPSが含まれることも判明しています。れんこんの旬は秋から冬にかけて、ちょうど風邪などが流行る季節です。この季節毎日れんこんを少しずつ食べると風邪やコロナの予防に大いに役立ちます。
〇ごぼう―ポリフェノールで抗酸化
ごぼうは陰陽でいうと陽性で体を温めてくれる食材です。また、抗酸化作用のあるポリフェノールが大変豊富に含まれており、免疫細胞を酸化ダメージから守って、その働きを高めてくれます。冬はぜひきんぴらごぼうを常備菜として用意し、毎日食べるようにしましょう。
〇にんじん―βカロテンで抗酸化
にんじんも陽性で体を温めてくれる食材です。またβカロテンを豊富に含むのもメリット。βカロテンは抗酸化力が高く、免疫を活性化させるほか、喉や肺を守る働きもあるとされます。
〇長ねぎ―血行促進&免疫力強化
長ねぎの白い部分に含まれる香り成分「アリシン」は血管を広げて血流を促進する効果があります。風邪のときにねぎを喉に巻くといい、という古くからの民間療法はこの作用を利用したものです。ただしこの成分は加熱によって失われてしまうので、長ねぎの白い部分は薬味として利用するのが効果的です。
また、長ねぎの青い部分には、免疫力を高める成分が含まれており、マクロファージを活性化する作用が確認されています。うれしいことに、この成分は加熱で損なわれることはありません。関東では白いねぎが一般的ですが、免疫力アップのためには、青い部分も積極的に利用しましょう。
〇梅干し―ウイルスを抑制
お弁当に梅干しを入れるとご飯が腐りにくいことからもわかるように、梅には細菌の増殖を抑える働きがあります。抗菌作用だけでなく、抗ウイルス作用もあることが近年の研究では明らかになっており、梅から抽出されたポリフェノールがインフルエンザや、口唇ヘルペス、ノロ等さまざまなウイルスの増殖を抑えることが確認されています。1日1個は梅干しを。防腐剤などが添加されていない、昔ながらの塩だけで漬けた梅干しがおすすめです。
〇納豆-腸内環境を整える
納豆は豆腐と違って大豆の皮も含むため、食物繊維が大変豊富です。また、納豆菌を豊富に含み、それは腸内の善玉菌の餌となって、腸内環境を整えるのに役立ちます。
〇豆乳ヨーグルト―免疫力を活性化
腸内の善玉菌の代表が乳酸菌。ヨーグルトは大変豊富な乳酸菌を含み、腸内環境を整えてくれます。また、免疫細胞は小腸の表面のパイエル板と呼ばれる場所でつくられますが、乳酸菌はそのパイエル板を刺激して活性化させ、免疫細胞を増やしてくれると考えられています。日本人の体質に合わない牛乳ではなく、豆乳でつくったヨーグルトがお勧めです。販売もされていますし、自分でつくることもできます。摂りすぎると体が冷えたりお腹がゆるくなったりしますので、自分に合った適量を摂るようにしましょう。ちなみにわたしは冷え性・陰性体質なので、冬はせいぜい2さじくらい。それでも整腸効果は十分です。
〇葛-小腸の粘膜を保護
葛のとろみは小腸の粘膜を潤し、保護してくれると言われています。また、葛は「葛根湯」という漢方薬の原料であることからもわかるように、血行促進、発汗、解熱、滋養強壮などさまざまな薬効があるといわれています。だから病気の人には葛湯がとてもよいのです。病気になる前から、料理のとろみ付けに葛を使ったり、葛餅やゼリーのようなデザートに使うのもよいでしょう。(おなじようにトロミが付くからといって、片栗粉では同様の効果は得られないのでご注意を。また市販の葛餅も小麦粉からできているものが多いので葛の薬効は望めません)
〇調理法のコツー皮はむかない
野菜のビタミン、抗酸化成分、LPSなど多くの微量栄養素は、皮の部分に集中的に含まれています。それを逃さず利用するためには、極力皮はむかないことです。また、ごぼうのアク抜きなどもしないことです。そうすることで大切な栄養を逃さず利用できるだけでなく、旨みも凝縮することができます。ごぼうも、にんじんも、れんこんも、大根も、皮をむかなければ時短にもなるし、生ごみも減るし、無駄を減らせて節約にもなるし、いいことづくめ。今までなんで皮なんか剥いていたんだろう、と過去の自分が滑稽に思えてくるほどです。ぜひお試しを。
×免疫力を下げる食品の代表=砂糖
砂糖、ブドウ糖などの糖類を摂ると、一時的に血糖値が急上昇しますが、高血糖は血管壁には有害で、血管壁が傷ついてしまいます。肺、腎臓、肝臓には、毛細血管が集中しているため、張り巡らされた血管壁が傷つくことで、それらの臓器全体もダメージを受けることになります。肺が弱れば、空気とともに入ってくるウイルスに抵抗する力が失われ、感染症にかかりやすくなります。つまり、免疫力が低下してしまうのです。マクロビオティックの創始者桜沢如一も、若い頃は結核に苦しみましたが、食を正し、砂糖を断ったことで、健康を回復しています。
白砂糖は極力避け、かぼちゃ、さつまいも、栗、果物など、自然な甘みを楽しむよう心がけましょう。
次回は、行動面から免疫力アップするコツをご紹介します。
「年間300日は風邪をひいていたわたしが、ほとんど風邪をひかなくなったのは、こうした食生活のコツを学んだから。もっと詳しく知りたい方は、ぜひサステナフード教室へいらしてみてくださいね」
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