「私たちは植物が幸せであるのを、昆虫が幸せであるのを見たいんだ」世界初の完全オーガニック(有機農業)の国になるという目標を定めたブータンで、農業相が述べた言葉だとされています。
(参考 https://jp.globalvoices.org/2013/05/24/21716/)
数年前この言葉をツイートしたとき、驚くほど大量のリツイートがあり、多くの人々の感動と共感とが見てとれたのですが、昨日は思わぬ所で、この言葉の背景を知るに至りました。
わたしは今年栃木県で「有機稲作チャレンジ」というプログラムに参加することにしたのですが、その主催のNPO法人民間稲作研究所では、近々ブータンでの農業ボランティアツアーも主催するため、昨日は両方のプログラムの参加者が合同で研修することになったのです。
そこで聞いた話とは……ブータンは敬虔な仏教国であるため、殺生を避ける意味もあって、農業の有機化を目指しています。
そのことを国連でも?宣言したものの、実際には除草剤ともう1種類の農薬(名前は失念)の使用だけは避けられずにいたといいます。
あるとき有機農業に関する国際会議で、ブータンの農業相がそのことを発表したとき、日本の有機農業研究者で元アジア学院理事長の田坂興亜氏は「いや、そんなことはない。それらの農薬を使わずに有機農業ができる技術が日本では完成している」と述べました。
それを聞いたブータンの農業相は「それが本当なら、日本から農業指導者をよこしてほしい」と田坂氏に要請。
田坂氏と民間稲作研究所を主宰する稲葉光圀氏の2名が、JICAから予算を獲得して、国王からの招聘という形で有機農業の指導を行うことになったのだそうです。
そして、それに同行するかたちでボランティアの人たちも一緒に行くことになったのでした。
ブータンの農業相の理想とは裏腹に、ブータンで実際に農業指導に当たっている技術者の多くは、フィリピンのIRRI(国際稲研究所)に留学して化学農業を学んできており、有機農業の実現可能性には懐疑的なのだそうです。
そんな中で、田坂氏と稲葉氏の指導する有機稲作がブータンで無事成功し、満足な収量をあげられるかどうかは、ブータンの有機農業の未来を左右するといえます。
昨日の研修の中では、田擦り器(たこすりき)という除草のための道具をみんなで手作りすることも行いました。ヒルムシロという水草を浮き上がらせておいて、それを取るのが目的だそうです。
これを全部取れるかどうかが、除草剤を使わずに済むかどうかの鍵を握るポイントだとのこと。
(しかし昨日は途中でねじ釘が足りなくなって未完成に終わったのですが(^^;))
世界中の人々の熱い共感を呼んだブータンの農業相の誌的な言葉が(本人はそんなことは言っていないと否定しているらしいですが)、本当に実現することを願わずにはいられません。
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