日本は既に集団免疫達成!?これ以上の規制は逆効果?

「日本は既に集団免疫達成!?これ以上の規制は逆効果?」

遅すぎた入国規制など、日本の新型コロナウイルス対策はダメダメのように見えた割には、欧米と比較して死者数がとても少ないことから「日本の奇妙な成功」「その原因は謎」などと欧米メディアで盛んに言われてきました。

その原因の分析としては、「BCGが有効なのでは」「手洗い、うがいの習慣」「(欧米と違って)マスクが一般的」「靴を脱いで家にあがるなど、清潔好きな生活習慣」「ハグやキスしない」「味噌を食べる」「民度が高い」などなど、さまざまな仮説が唱えられてきましたが、決定打といえるものはないように、わたしは感じてきました。

そんな中、京都大学の上久保靖彦教授が「日本は既に集団免疫を獲得済み」との説を唱えていることを知り、大いに腑に落ちるものを感じたのでご紹介したいと思います。

上久保氏の説の前にまず現在までの感染者数と死者数を確認しておきましょう。

NHK特設サイト新型コロナウイルスより転載
NHK特設サイト新型コロナウイルスより転載

感染者数が増えていることがマスメディアでは盛んに報道されますが、死者は逆にグラフのとおり大幅に減っており、7月に入って以降死者ゼロの日も多いのです。また、重症者も4月末をピークにほぼ減り続けており、7/22日に新たに重症となった患者はわずか4人しかいません。(出典:東洋経済オンライン新型コロナウイルス国内感染の状況

最近のマスコミはこうした重要なポイントを報道せず、感染者数だけを報道することによって無駄に危機感を煽っているように思えます。感染者の中にはまったく無症状の人もいるわけで、その数をカウントすることにもはや意味はない、とわたしは見ています。

ここから上久保氏の説のポイントをわたしなりの解説を交えてご紹介します。

この冬のインフル患者の少なさは新型コロナが原因だった

インフルエンザに罹患すると、免疫細胞からサイトカインという生理活性物質が大量に分泌されるため、その免疫効果によって新型コロナウイルスは人体に入ってくることができません。同様に、新型コロナウイルスにかかっていると、インフルエンザにはかかりません。

このようにウイルスに感染、発症することで、他のウイルスの侵入を防ぐ結果となることを「ウイルス干渉」と呼びます。

インフルエンザは毎年冬に流行のピークを迎え、患者数はきれいな山形の折れ線グラフになるのが通常ですが、2019~2020の冬にはその山が大幅に低くなっているとともに、山に切れ込みが発生しています。つまりインフル患者数の急減する時期があります。

その時期こそが、日本に新型コロナウイルスが入って来て感染が広まった時期だと見られます。

出典:YouTube 特番『衝撃!日本では既に”集団免疫が達成”されている!?』ゲスト:京都大学大学院医学研究科特定教授 上久保靖彦氏(松田政策研究所チャンネル)

グラフでわかるS型とK型の上陸時期

新型コロナウイルスはスパイク(突起)が人間のACE-2という受容体に入り込むことで感染します。上久保氏はそのスパイク部分のアミノ酸に起きた変異を分析し、一番初期のものを「さきががけ」の頭文字を取ってS型と名付け、続いて日本に入ったものをK型と名付けました。

インフル患者数のグラフの山に最初の切れ込みがあるのが、2019/12/23頃ですが、その頃に入ってきたのが新型コロナのS型であり、次の切れ込みがある2020/1/13頃に入ってきたのがK型です。

出典:YouTube 特番『衝撃!日本では既に”集団免疫が達成”されている!?』ゲスト:京都大学大学院医学研究科特定教授 上久保靖彦氏(松田政策研究所チャンネル)

S型もK型も、症状は軽く、普通の風邪と大きく変わることはありません。ただ、咳や痰がしつこく長引くなど、いつもの風邪と多少違うな、と感じることもあるかもしれません。多くの人が1月頃にそんな風邪を経験しているはずです。ちなみにわたしは2月に経験しています。

弱毒型のS型とK型が、強毒型(武漢G型、欧米G型)を防いだ

S型は非常に弱いため、人体内ではウイルスを撃退する「中和抗体」がつくられません。K型の場合も中和抗体はできませんが、T細胞(リンパ球の一種)からサイトカイン(免疫機能を活性化する生理活性物質)が大量に分泌されるため、ウイルスをしっかりと抑制することができます。

日本では最初にS型が流行し、次にK型が流行したため、K型の感染で獲得した免疫で、その後入ってきた強毒型の「武漢G型」や「欧米G型」をしっかりと抑制することができました。そのために重症化する人が極めて少なく抑えられています。

出典:YouTube 特番『衝撃!日本では既に”集団免疫が達成”されている!?』ゲスト:京都大学大学院医学研究科特定教授 上久保靖彦氏(松田政策研究所チャンネル)

(免疫には自然免疫と獲得免疫とがあります。自然免疫は外敵一般を攻撃するもの。獲得免疫とは、特定の外敵を認識して、その特定の外敵だけを攻撃するような免疫で、これができるまでには感染から多少の時間が必要になります。さらに、獲得免疫には、細胞性免疫と液性免疫とがあります。T細胞が主役となる細胞性免疫はウイルスに感染した人間の細胞を死滅させることによってウイルスを撃退するもの。一方、液性免疫はウイルスと合体する「抗体」がB細胞によって産生され、それが体液中を循環して抗原(この場合はウイルス)と結びついて撃退します)

欧米の重症化はK型が十分入らなかったため

日本が3/9まで中国からの渡航を止めなかったのに対し、欧米は主に2/1に中国からの渡航者を制限しました。そのため、日本にはK型が十分に流入したのに対し、欧米ではK型の流入が十分ではありませんでした。また、アメリカでは2019~2020の冬にインフルエンザが非常に大規模に流行しました。これもアメリカにおけるK型の感染を阻害する要因となりました。そのため、その後入ってきた武漢G型や、欧米G型に感染したとき、日本と違ってK型で獲得した細胞性免疫で抑制することができませんでした。

ADEが重症化に拍車をかけた

欧米での重症化のもうひとつの原因が「ADE(Antibody Dependent Enhancemen=抗体依存性感染増強)」です。これは、以前感染したウイルスに対する抗体が、次に感染した際の重症化を引き起こす現象を指します。本来であれば抗体はウイルスの感染力や毒性を失わせるなどの役目を果たすものですが、それが逆に免疫細胞のウイルス感染をもたらし、その免疫細胞が暴走して症状の悪化を招きます。SARS、デング熱、エボラ出血熱などでも、ADEが起こることがわかっています。

S型に対する抗体(抗体の中には「中和抗体」ではない抗体もあります)にもこのADEを引き起こす作用がある、と上久保氏は見ています。その証拠に、S型にかかった後で(K型にかからずに)G型にかかると、致死率が高くなることを上久保氏は計算によって突き止めています。

ADEが起こることでウイルスの増殖が盛んになり、大量に増えたウイルスに対して過剰な免疫反応(サイトカインストーム)が起こって、人間の体の組織が攻撃を受け、その結果多臓器不全などに至るのです。

欧米ではS型の感染が拡がったものの、K型は拡がらず、次にG型が拡がったことで、この「抗体依存性感染増強」が起こり、それが大量の重症患者を生んだと考えられます。

(「新型コロナは二度目に感染した時が危ない」という主旨の情報が2月頃からネット上で散見されましたが、その理由がこのADEだと考えられます)

集団免疫獲得は本当なのか?

上久保氏によれば、日本人の54%は既にK型に感染した履歴があるといいます。

しかし、マスメディアの報道によれば、新型コロナウイルスに対する抗体を持っている日本人は1%以下(厚労省が6/16に発表した調査結果によれば、抗体陽性率は投稿で0.10%、大阪府で0.17%、宮城県で0.03%です。

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/report/t344/202006/566064.html

この大きな落差はどこからくるのでしょうか。

まずひとつは何を検出しているかという問題です。厚労省の抗体検査では、武漢G型・欧米G型に対する中和抗体を検査したと考えられます。しかし、K型に感染した経験のある日本人は、T細胞から出るサイトカインによってG型ウイルスを撃退することができるので発症には至らず、G型に対する中和抗体がつくられません。ですので、G型に対する中和抗体を調べれば、持っていない人が多いのは当然といえます。

しかし、これはK型の既感染者が免疫を獲得していないことを意味するわけではありません。人間の細胞の中から新型コロナウイルスに感染した細胞だけを識別して攻撃する細胞障害性Tリンパ球(=Cytotoxic T Lymphocyte=CTL)の有無を調べる「CTLキット」を用いることで、K型に対する免疫が獲得されているどうかを調べることができます。これで調べると54.8%の人がK型に対する免疫を持っていることがわかるといいます。

出典:YouTube 特番『衝撃!日本では既に”集団免疫が達成”されている!?』ゲスト:京都大学大学院医学研究科特定教授 上久保靖彦氏(松田政策研究所チャンネル)

もうひとつの問題は検査のカットオフ値(陽性と陰性の境目の値)の設定の仕方です。抗体の量がどの程度以上あれば陽性と判定するか、というその値は人間が決めるもので、それによって判定結果はいかようにも左右されてしまいます。

病院に入院して重症だった患者が回復した後に検査をすれば抗体の量も多く検出されるが、軽症者や無症状患者の場合には、抗体もわずかしか検出されない。それなのに、重症から回復したような人の値を基準として検査をするから、ほとんどの人が陰性となってしまうのだ、というのが上久保氏の説です。

カットオフ値を正しく設定することにより、G型に対する抗体保有率は30%程度あることが確認できるのだそうです。

54.8%の人がK型に、約30%の人がG型に感染済み。つまり合計約85%の日本人が既に新型コロナウイルスに感染しています。「集団免疫」に必要な罹患率の計算法は素人の理解のレベルを超えているようなのでここでは追及しませんが、上久保氏の計算によれば、日本は既に集団免疫を獲得しているといえるのだそうです。

第2波を防ぐにも、渡航制限継続は逆効果?

既に集団免疫を達成してしまった日本では、流行の第2波は訪れない、と上久保氏は見ています。

しかし、免疫というものは永遠に維持されるわけではなく、次第に廃れていってしまうものです。免疫を維持するためには、ある程度ウイルスにさらされて刺激を受けるほうがいいのです。これを「ブースター効果(追加免疫効果)」といい、再度抗原と接触することで免疫が増強されることがわかっています。

つまり、このまま外国との人的交流を遮断し続けると、ブースター効果を得ることができず、逆に免疫の低下を招いてしまう可能性があります。絶対にウイルスにさらされないように遮断してしまうことで、ADE(抗体依存性免疫増強)が起こり、重症化するようになる可能性も否定できない、と上久保氏はといいます。

新型コロナウイルスを地上から根絶することはできず、これからずっと共生していくことになります。その前提に立てば、せっかく得た免疫を保持していくために、ウイルスへの暴露がむしろ好ましいのです。

武漢での惨状を説明できるか

しかし、よく考えると、では、なぜ武漢であんな惨状が拡がったのか、武漢ではなぜK型で獲得した免疫でG型を撃退できなかったのか、という疑問も湧いてきます。このことに関しては上久保氏は(少なくともわたしが見た動画や氏の説を紹介した記事の中では)触れられていませんでした。

しかしこれも、K型が武漢以外の地で発生した、と考えれば説明できるのではないでしょうか。上海、香港など、日本や東アジアとの人の往来が盛んな地域で変異したと仮定すれば、これらの国々で死亡率が低いことも説明できます。

武漢ではK型の流行が行き渡る前にG型の変異が起こったために重症化する人が大量に発生した、と考えれば矛盾はなくなるでしょう。

大量の死亡者が出ている諸外国との渡航制限解除に踏み切るのは確かに勇気がいることです。しかし、少なくとも日本国内での移動はもう制限しなくてもよいのではないか、GoToトラベルキャンペーンをやっても大丈夫なのではないか、と直観的に感じていたわたしにとって、上久保氏の話は大変説得力を持つものでした。

ウイルスの感染を完全に防ぐことは不可能だということ、感染はあっという間に広がるということ、防疫には消毒よりも結局は人間が持つ免疫力が重要だということも、上久保氏の話の中には散りばめられており、そうした点も、わたしにとっては大いに共感できるところでした。みなさんはどうお考えでしょうか。

さらに詳しく知りたい方は下記の記事や動画をご覧ください。

日本のコロナ致死率の低さを巡る「集団免疫新説」が政治的破壊力を持つ理由(ダイヤモンドオンライン)

※上記の動画をご覧になった方へ。上記の動画の冒頭にインフルエンザの流行と新型コロナの死亡率とを対比させる地図が出てきますが、インフルの地図は2019年末~2020初頭のものを挙げるべきところ、上久保氏は2018年末から2019年初頭のものを挙げています。おそらくは単純ミスではないかと思われます。新型コロナウイルスの流行は中国人が大量に入ってきた地域でまず発生した、と考えるのが自然で、雪祭りに大量の観光客が訪れた北海道で感染が初期に拡がるなど、必ずしもインフルエンザの流行との相関関係だけで説明できるものではありません。