肥料過多は健康に悪影響 ー硝酸態窒素の害と現状の衝撃的な数値ー 健康のためには自然栽培野菜を

自然栽培の野菜、肥料をやらないで育てた野菜のほうが健康には良い、特に病気の人や虚弱体質の人にはよい、と前回のブログで述べました。今回は、その理由についてご説明するとともに、現実の野菜にどの程度の肥料の残留物が含まれているかを考えてみたいと思います。

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肥料の三大成分は「窒素、リン酸、カリ(カリウム)」といわれます。窒素は空気の約80%を占める物質ですが、植物はこの気体を吸収することはできません。植物が吸収できるのは、硝酸態窒素、またはアンモニア態窒素で、化学肥料は必ずこのどちらかの成分を大量に含んでいます。

 

一方、有機肥料は、一般的には牛糞、鶏糞などの畜糞と、稲わら、麦わら、枯れ草などの植物性資材とを混ぜて腐らせるか発酵させたものです。微生物によってこれらの有機物は次第に分解されてゆき、最終的にはその窒素分はやはり、アンモニア態窒素か硝酸隊窒素になってから、植物に吸収されます。

窒素の変遷-2

硝酸態窒素は人間の体内で一部が亜硝酸態窒素に変化しますが、この亜硝酸態窒素は健康に大きな悪影響を及ぼします。特に乳幼児の場合には、この硝酸態窒素から亜硝酸態窒素への変化が非常に起こりやすいため、重篤な事態を引き起こす場合があります。

 

亜硝酸態窒素は赤血球中のヘモグロビンを酸化してメトヘモグロビンという物質に変化させ、酸素を運搬するというヘモグロビンの機能を奪ってしまうのです。これを「メトヘモグロビン血症」と呼びます。このメトヘモグロビン血症によって酸欠に陥り、乳幼児が亡くなる、という痛ましい事件が戦後一時期の欧米で何十件か起こりました。唇が真っ青になる「チアノーゼ」を起こして亡くなるため「ブルーベビー症候群」と呼ばれて社会問題となりました。

 

このときの原因となった硝酸態窒素の摂取源は野菜ではなく、井戸水でした。野菜のために施した肥料が地下水を汚染したのです。乳児らはその水で溶かした粉ミルクを飲んだのでした。

 

野菜を食べての死亡例は確認されていないかと思いますが、それでも離乳食をつくるときなどには、その野菜の品質に十分注意を払いたいものです。

 

大人の場合は、硝酸態窒素→亜硝酸態窒素の変化がそれほど激しくは起こらないため、メトヘモグロビン血症を起こすことはありません。その代わり、亜硝酸態窒素が胃の内部で化学反応を起こし、ニトロソアミンという物質ができることにより、胃がんの発生率が増加するという研究があります。IARC=国際がん研究所の発ガン性物質のリストでも「亜硝酸塩」(=亜硝酸態窒素)は2A(ヒトに対して恐らく発がん性がある)と位置付けられていました。(ただし2019年現在のリストからは外されています。発ガンに関しては明確な関係が認められないという説のほうが有力になりつつあるようです)。

 

その代わり「硝酸塩の曝露による心血管系や副腎への影響、糖尿病との関連、母親の妊娠中の曝露による生殖への影響や子どもの中枢神経系の先天奇形、腫瘍との関連を示唆した疫学研究がある」と、食品安全委員会の報告書には記されています。(出典:「清涼飲料水評価書 硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素、亜硝酸性窒素」2012年2月 食品安全委員会 化学物質・汚染物質専門調査会)(※硝酸塩と硝酸態窒素は同じものです)

以下、上記の報告書から何か所か抜粋します。

 

  • 「副腎への影響については、調理した野菜から 0.5 mg/kg 体重/日の NaNO2(註:亜硝酸塩)を 9日間摂取したヒトで尿中への 17-ヒドロキシステロイド、17-ケトステロイドの排泄が減少し、副腎ステロイド生成の減少が示唆されたことが報告されている(参照 127)」

127  Violante A, Cianetti A, Ordine A. Studio della funzionella cortico surrenalica in corso di intossicazione con sodia nitrio. [Adrenal cortex function during subacute poisoning with sodium nitrite.] Quaderni Sclavo di Diagnostica Clinica e di Laboratorio. 1973; 9: 907-920.

 

  • Gatseva らが、ブルガリアの中央制御による水供給を受けている二つの村、すなわち、飲料水中硝酸塩濃度が高い村(研究時は 75 mg/L、23 年間の平均は 76.5 mg/L)と硝酸塩に曝露されていない村(研究時は 8 mg/L、23 年間の平均は 10.7 mg/L)の学童(7~14 歳。曝露群 156 名、非曝露群 163 名)について、尿中のヨウ素濃度、甲状腺腫の発生頻度を調べた結果、尿中ヨウ素濃度に有意差は認められなかったが、甲状腺腫が硝酸塩曝露群において非曝露群に比べ有意に多かった(曝露群 13.5%、非曝露群 4.9%。オッズ比 3.014(95%CI; 1.293~7.027))(参照132)。

132 Gatseva PD, Argirova MD. Iodine status and goitre prevalence in nitrate-exposed schoolchildren living in rural Bulgaria. Public Health. 2008a; 122(5): 458-461.

 

  • 「神経管欠損を有する子どもの母親 538 名、対照 539名に妊娠前後の水道水、食事摂取についてインタビューしたアメリカにおける人口ベースの症例対照研究で、16 mg/L 以上の硝酸イオン摂取は無脳症のリスク増加と相関が認められた(参照 137)」

137 Croen LA, Todoroff K, Shaw GM. Maternal exposure to nitrate from drinking water and diet and risk for neural tube defects. American Journal of Epidemiology. 2001; 153: 325–331.

 

 

  • 「子どもの型糖尿病については、いくつかの横断研究で発症率と飲料水中の硝酸塩濃度に正の相関が認められたことが Ward らの総説(参照 82)で報告されている」

「また型糖尿病について、高齢の患者と健康なヒトで血清の亜硝酸塩及び硝酸塩の濃度を比較した結果、患者で有意に高かったとの報告(参照 136)がある」

82 Ward MH, deKok TM, Levallois P, Brender J, Gulis G, Nolan BT, vanDerslice J. Workgroup Report: Drinking-water nitrate and health - Recent findings and research needs. Environ Health Perspect. 2005; 113(11): 1607-1614.

136 Nunes SF, Figueiredo IV, Soares PJ, Costa NE, Lopes MC, Caramona MM. Semicarbazide-sensitive amine oxidase activity and total nitrite and nitrate concentrations in serum: novel biochemical markers for type 2 diabetes? Acta Diabetol. 2009; 46(2): 135-140.

 

  • ヒト経口致死量は亜硝酸イオンが 33(子ども、高齢者)~250 mg/kg 体重、硝酸イオンが 67~833 mg/kg 体重と報告されている(参照 75)」

75 Corré WJ, Breimer T. Nitrate and nitrite in vegetables. Wageningen, Centre for Agricultural Publishing Documentation (Literature Survey No. 39). 1979

 

  • 「硝酸塩の急性毒性として腹痛を伴う急速かつ重篤な胃腸炎、血尿及び血便が、慢性毒性としては消化不良、精神的な抑うつ、頭痛、衰弱が挙げられている(参照 7、76)。」

7 Joint FAO/WHO Expert Committee on Food Additives (JECFA). Nitrate. WHO Food Additives Series 35. 1996a

76 Fassett DW. Nitrates and nitrites. Toxicants occurring naturally in foods. Natl.Acad. Sci. 1973; 7-25.(参照 7 より引用)

 

同報告書は

  • 「硝酸性窒素の非発がん毒性を指標とした場合のTDI(註:耐容一日摂取量)を1.5 mg/kg体重/日、亜硝酸性窒素の非発がん毒性を指標とした場合のTDIを15 μg/kg体重/日と設定した」

と結論づけています。

 

一方、農水省のWEBサイトには硝酸塩の1日許容摂取量(ADI)に関して、 「FAO/WHO合同食品添加物専門家会合(JECFA)は、 ADIを体重1kg当たり0~5mgと推定しました」と記されています。

 

では現実に、野菜にはどの程度の硝酸態窒素が含まれているのでしょうか。政府関係機関が調査したデータを下記に挙げます。

国内野菜の硝酸隊窒素濃度出典:食品安全に関するリスクプロファイルシート(化学物質)by農林水産省 更新日:2015 年 12 月 2 日

もちろん農家によって肥料を大量に使う人、そうでない人がいますので、市場における野菜の硝酸態窒素濃度はまちまちです。ここではこの表の中でもっとも高い小松菜の「最大値」9490mgを例にとって計算してみます。これは1kg当たりの数値であり、小松菜を一度に1kgも食べる人はいないので、1人前を70gとして計算しましょう。

9490÷1000×70=664

肥料残留度の高い小松菜だと、1食で664mgもの硝酸態窒素を摂取してしまうことになります。

 

体重50kgの人だと、体重1㎏当たり13.28mgの硝酸態窒素を摂取することになり、食品安全委員会が耐容一日摂取量として設定した数字の約9倍、JECFAの設定した1日許容摂取量の約2.5倍の量となってしまいます。

 

これを5皿食べれば、66.4mg。ヒト経口致死量は67mg~833mg(上述)だそうですから、体が弱い人なら、それだけで死ぬこともあり得るという、なんとも恐ろしい計算になります。

 

70g×5皿で350g。国が推奨する1日の野菜摂取量がちょうど350gですから、野菜好きの人であれば、難なく摂取してしまえる量です。それにこれだけ大量の硝酸態窒素が含まれ得るのです。

 

「肥料は農薬以上に危険」と主張する人が一部にいますが、それももっともだと思えてくる数値です。

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今度はほうれん草の「平均値」で計算してみましょう。

1食70gで摂取する硝酸態窒素の量 3070÷1000×70=214.9mg

体重50kgの人の場合、1㎏当たりの硝酸態窒素の量 4.3mg

 

となり、やはり1食だけでも食品安全委員会の耐容一日摂取量の1.5mgをはるかに超え、ECFAの設定した1日許容摂取量にはかろうじて収まるという具合です。

 

ちなみにEUでは、こうした硝酸態窒素の害に配慮し、残留基準値が定められており、それを超える野菜は販売することができなくなっています。

硝酸隊窒素濃度の基準値EU出典:食品安全に関するリスクプロファイルシート(化学物質)by農林水産省 更新日:2015 年 12 月 2 日

 

しかし、日本では硝酸態窒素の残留基準が定められていないため、EUの基準をはるかに超える農産物も、前掲の表のように一部では売られています。そして、どういうわけか、有機JAS認証を取っている野菜には、腐りやすいものが多く、それは肥料のやり過ぎを意味しており、つまるところ、有機JAS野菜の硝酸態窒素濃度は平均よりも高いのではないかと予想されます。

 

それに対して、肥料をやらない自然栽培野菜の硝酸態窒素濃度はグンと低くなります。硝酸態窒素が多く含まれるのは一般的には葉物野菜ですが、自然栽培の場合には、葉物野菜にもわずかしか硝酸態窒素が含まれていないことが、下記の表からご覧いただけるでしょう。まさにケタ違いの低さです。自然栽培と慣行栽培の硝酸態窒素濃度の比較出典:「自然栽培と慣行栽培野菜の化学成分の比較」 杉山修一・遠嶋凪子 弘前大学農学生命科学部 (2015年11月11日受付)

上記のような理由から、自然栽培野菜が健康によいことがおわかりいただけるかと思います。

「わたしは自然栽培野菜に切り替えてから、風邪をひかなくなったうえ、冷え性も緩和されてきているのを感じています。

野菜が大好きでついつい食べ過ぎてしまうため、以前は硝酸態窒素の害を受ける度合いも、世間の人以上に大きかったのでしょうね」

美絵似顔絵イラスト
自然療法家 安田美絵
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(ルナ・オーガニック・インスティテュート@品川)
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