映画『トマト帝国』を見て

☆トマトペーストに混ぜ込まれる大量の白い粉の正体とは?

☆トマトの赤が血の色に見えてくる?-搾取される農民の実態とは?

☆倫理的な消費行動で社会を変えよう! 世界でもっとも倫理に反する国はどこ?

★★映画『トマト帝国』を見て★★

トマトの楽園

YouTube 予告編『トマト帝国』より

 

11.18、国際有機農業映画祭で一番印象に残ったのは、フランス映画『トマト帝国』です。

 

イタリア料理の人気とともに世界中に利用が広がったのがトマトペーストの缶詰。今、中国は世界第2位のトマト缶輸出国となっています。中国内のトマトの一大生産地は新疆ウイグル自治区。ここでトマトの収穫に従事するのは地方から出稼ぎに来た貧しい農民です。給料は収穫量に応じた出来高払いで安定しないうえ、重労働なので、やりたがる人は少なく、中国でも最貧困層の人々しかやらないといいます。

 

四川省からの出稼ぎ農民

YouTube 予告編『トマト帝国』より 四川省からウイグルへ出稼ぎに来た農民

 

そこで収穫されたトマトは工場に運ばれ、皮をむいてタネを取り、濃縮されて、缶詰にされ、世界各国に輸出されます。ハインツ、キャンベル、マコーミック、ユニリーバなど、欧米の食品企業の製品にも、今やこうした中国産のトマトペーストが当たり前のように使われています。トマト料理の本場イタリアでも、いかにもイタリア風のラベルを付けたトマトペーストの缶詰が売られていますが、中身は中国産、ということもままあるのです。

 

驚いたことに、中国の工場では、トマトペーストに大量の白い粉を混ぜ込んでおり、その主成分は大豆の食物繊維(その他麦芽糖など)。トマト8に対して増量剤2を混ぜ込むのが当たり前となっており、しかもそれはラベルに表示されることはありません(!)。政府もそれを知ったうえで、輸出を承認しているのです。

 

欧米の輸入業者もみなそのことを知っているといいます。混じり気のない純粋なトマトペーストを要求すれば、中国の輸出業者は、その分高い値段を要求してくる。つまり欧米の業者も知っていて、安い方を選んでいる、ということのようです。そこまではわかるとして、それを表示しない、というのはあまりにもひどすぎるのではないでしょうか。

 

トマト加工品YouTube予告編『トマト帝国』より

 

中国のトマトペースト缶は世界130か国?だかに輸出されているといいますから、当然日本にも入っています。日本で売られているトマト加工品も同じなのでしょうか。

 

試しにカゴメ、ハインツ、デルモンテなど、いくつかのメーカーのトマトピューレ、ケチャップなどの原材料をチェックしてみましたが、どこにも大豆食物繊維とは書いていませんでした。表示の不正が行われている可能性があります。

 

中国から安いトマト缶が大量に入って来るようになったせいで、アフリカのガーナでは15年間でトマト缶の売り上げが30倍になりました。その一方で、ガーナのトマト農家はトマトの消費量が減って、食べていけなくなりつつあります。グローバル経済が各地で犠牲者を生んでいるのです。

 

アフリカ破産した農家

YouTube予告編『トマト帝国』より

 

そのようにして失業したアフリカ人たちの一部は、仕事を求めて地中海を超え、ヨーロッパへとやってきます。イタリアのトマト農場で働くアフリカ人たちは、水道もないプレハブ小屋で暮らし、故郷のアフリカ以上にひどい生活環境だと嘆く人もいます。仲間の中には40度を超える暑さの中で頑張りすぎたせいで、熱中症で命を落とした者もいて、倒れても救急車を呼ぶ権利もない、何の権利もない自分たちは、まるで奴隷だ、と憤る人もいます。約束の給料が支払われないなどのトラブルも多いようです。

 

負け組労働者

YouTube予告編『トマト帝国』より

 

トマト缶の業者がグローバル経済の波に乗って成功する裏で、敗者となった農民たちの悲惨な状況をつぶさに観察した監督は、「トマトの赤は血の色に見える」と言います。

 

映画の中では対応策は何も語られないまま終わりましたが、「自分はそういう搾取には加わりたくない」と思ったら(思いますよね?)そのための解決策が必要です。わたしたちに何ができるかを考えてみましょう。

 

まず、国産のトマトを使った製品ならよいのではないか、という考えが浮かびますが、国内メーカーであるカゴメですら中国産のトマト加工品を原料として使っていることをWEBサイトに明記しています。http://www.kagome.co.jp/products/origin/china/

 

国産原料を使うことを原則とする生協では、国産のトマトを使っていることを明記しているところもあります。

https://www.tohto-coop.or.jp/kodawari/01_tomato_ketchup.html

しかし、国産のトマトなら誰も搾取していることにならないとは限らない、というところが、また恐ろしいというか困ったところなのです。

 

トマトの惑星YouTube予告編『トマト帝国』より

 

有機農業映画祭では、映画の前に大野和興氏による解説がありましたが、それによると岐阜大学で除草用に買っていた山羊が人間に取って食われるという事件があったそうですが、その犯人はベトナム人。農業実習生として長野のトマト農場で働いていましたが、朝の6時から、なんと深夜2時まで働いていたとか。夕方5時までは自給750円で、それ以降は歩合給。歩合を稼ぐために1日に1千袋ものトマトを袋詰めしていたといいます。寝る場所は配管むき出しの元農機具置き場で、そんな場所なのに家賃を月2万円も取られていたというのです。そんなひどい労働環境でも、借金して来日しているため、しばらくは我慢して働き、家族に仕送りするなどしていましたが、ついに疲れ果てて逃げ出し、ついには山羊を盗んで食べるに至ったというのです。

 

もちろん日本のトマトがすべてそのような状況下で生産されているわけではなく、一部に限られた話だとは思いますが、国産のトマト加工品さえ選べば搾取に加担せずに済む、とは言い切れません。

 

スパゲッティ―のソースやラタトュイユをつくるときなど、トマト缶やトマトピューレを使うこともありましたが、確かに生のトマトを使うよりもずっと安い。その安さを実現するために、どれだけの搾取が行われているか、知ってしまうと、やはりトマトソースは、生のトマトから自分で作るしかないのではないか、と思えてきます。

 

テンペアラビアータ-tP1270492

生トマトを使ってつくった、テンペのアラビアータ

 

ケチャップは糖類がたっぷり入っていて、健康にはよくないので、もともと使いませんが、今後はトマトピューレやトマト缶も極力避けるようにしたいと思います。外食でトマトソースのパスタを食べるのも考えものですね。おいしいけれど……。知れば知るほど悩みは深まりますが、まずは食べる回数を減らす、というところからでもスタートしませんか。

 

わたしたち消費者が何かを買うとき、それはそのメーカーを、輸入業者を、農場を、支援しているということに他なりません。搾取をしている業者からは買わない、まっとうな業者から、まっとうな製品しか買わない、ということが、搾取をなくし、公正な社会をつくるための力となります。「倫理的な消費行動」が社会の歪みを正します。お金がよい生産者に流れるような買い物の仕方を工夫しましょう。

 

なお、最後に、倫理に反する最たる国を指摘しておきましょう。映画『トマト帝国』の冒頭では、トマトの一大産地である中国の新疆ウイグル自治区を紹介するにあたり「ここではウイグル人はもはや少数派だ。移住してきた漢民族や貧しさから出稼ぎに来た農民などが多数派となっている」と語られるシーンがあります。そんなふうに短く、ごくあっさりと触れられているだけですが、そもそもはウイグル人の国であった東トルキスタン(とウイグル人は彼らの土地を呼びます)で、既にウイグル人が少数派となってしまったのはなぜでしょうか。

 

中国人アニメ

YouTube 予告編『トマト帝国』より

 

トルコ系の民族であるウイグル人は顔つきもかなり西洋風で、漢民族とはまったく違います。中国政府はウイグルの豊富な地下資源などを目当てに1949年に勝手に侵略し地域を占領し、ウイグル人を虐殺したり、核実験によって大量の人を病気にしたり、男性は政治犯として収容したり、女性は他の地方に強制連行して漢民族と結婚させたり、ウイグル人の子どもを勝手に内地に里子に出してしまったり、学校でのウイグル語の使用を禁止して文化を抹殺しようとしたり、数々の非道な仕打ちを行ってきました。現在は「再教育施設」という名の収容所に100万人規模の人々を強制的に閉じ込めイスラム教の信仰を捨てるよう徹底した洗脳を行い、従わない者は出てこられないようにするなど、恐ろしい「民族浄化」を行っています。この現代の21世紀にそのような残虐なことが行われているというのは、信じがたいことですが真実です。

 

さらに言えば、中国では臓器売買が人民解放軍の重要な資金源になっているといわれていますが、ウイグルのカシュガル空港では「特殊旅客 人体器官伝輸通道」と書かれた通路が2017年に登場しました。輸送に急を要する臓器のために素早く搭乗手続きを済ませることのできる専用通路だとのことです。わざわざ専用通路を設けるほど大量の臓器がウイグル人から摘出されて輸送されているのかと思うと身の毛がよだちます。

 

ウイグル人臓器売買(特殊旅客、人体器官輸送通路)カシュガル空港

写真出典:西村幸祐氏ツイッターより

 

個々の中国人の中にはいい人もいるでしょうが、中国政府、中国共産党は、そのような極悪非道な組織であるということは是非知っておきたいことです。

映画『トマト帝国』は、南仏プロバンスのトマト加工会社が中国人のリウ将軍に買収された、というところから始まりますが、ところで、なぜ「将軍」なのでしょうか。

 

YouTube 予告編『トマト帝国』より リウ将軍

 

彼は元人民解放軍の兵士で「新疆建設生産兵団」に属しています。これはウイグルの地の開発とウイグル人弾圧のための屯田兵的な組織です。このリウ将軍はウイグルの気候がトマトに合っていることに目をつけ、買収した企業のいくつかあった事業のうち、トマト栽培と加工品製造だけに絞って他を切り捨て、急成長させることに成功してきました。そしてウイグルだけでは飽き足らず、フランスの企業を買収したり、アフリカに工場を新たに建設したりと、世界中に事業を拡大しているのです。しかし、彼が「新疆建設生産兵団」の「将軍」である以上、その利益の一部はウイグル人の弾圧のために使われるはずです。(中国では人民解放軍も独立採算制の組織らしいので、新疆建設生産兵団もおそらく同じではないかと推測されます)。つまり、世界各国に販売するトマト加工品の利益でもって、彼らはウイグル人を弾圧するための強制収容所を建設したり、ウイグル人を殺してその臓器売買でさらに利益をあげているものと推察されます。

 

映画の中ではたしか、「トマトの赤は移民たちの血の色に見える」という字幕があったように思いますが、移民や出稼ぎ労働者たち以上に悲惨で、実際に血を流している(比喩ではなく)のはウイグル人たちです。そこまで考えると、トマトの赤は臓器売買されるウイグル人の血の色に見えてきて、わたしは食欲が失せてきました。

 

YouTube 予告編『トマト帝国』より

 

中国製品は信頼できないから買わない、という人がいますが、それ以上に、中国政府は倫理に反するから中国の応援はしない、だから買わないんだ、という心意気を、多くの人に持っていただきたいと思います。