「大豆は危険」に反論します!

フェイスブックで「大豆の摂取は危険」という情報を見かけたけれど、どうなのかしら? という相談を受けました。
 
その情報とはこちら↓
「大豆食品は健康的」は真っ赤なウソ!? 有機栽培でも防げない、大豆そのものが持つ4つの危険物質とは? 
 
上記の記事でマコーラ医師は、発酵させた大豆食品(納豆や味噌、テンペなど)は健康によいけれど、発酵させていないもの(豆腐や豆乳など)は健康に悪い、と主張しています。
 
一方わたしの意見は、大豆食品はなるべく発酵したものを食べる方がよいが、発酵していないものも、ほどほどに食べるなら問題ない、というものです。
 
詳しくは、上記の記事をひきながら、ひとつひとつ検証してみましょう。
 
まずマコーラ医師が大豆食品を問題視する第一の理由は、ほとんど全ての大豆食品が遺伝子組み換え食品だということ」としています。しかしこれはアメリカでの事情であって、日本では違います。日本では納豆や味噌、豆腐、豆乳などにもしも遺伝子組み換え大豆を使った場合には表示義務が課せられるため、日本の食品メーカーはこれらの製品には遺伝子組み換え大豆を使っていません。
 
次の問題として「大豆にはトリプシン抑制物質が含まれているということ」が挙げられています。トリプシンというのはたんぱく質分解酵素のことで、この働きを抑制する物質は「トリプシンインヒビター」と呼ばれています。生の大豆を食べると、この成分のせいで下痢が引き起こされますが、この成分は加熱すれば不活性化します。ただし、加熱した食品にも多少は活性の残存があり、発酵食品ではその割合がごくわずかである(納豆0.7%、醤油0.8%、味噌0.3%)のに対し、豆腐や豆乳などでは比較的多くなっている(木綿豆腐2.5%、絹ごし豆腐4.3%、豆乳13.0%)のは事実です。
 
ただし、豆腐を食べて下痢をする、という人の話は聞いたことがありませんから、それほど大きな悪影響があるとは思えません。納豆と比較して豆腐や豆乳のたんぱく質は消化吸収されにくい、と理解しておけばよいでしょう。ただし豆乳を飲みすぎると下痢をする人はいて、大豆が陰性であること(後述)に加え、トリプシンインヒビターが関与している可能性もあります。豆乳は飲料としてゴクゴク飲むのではなく、料理やお菓子に少量使うにとどめましょう。
 
(一部には、トリプシンインヒビターの活性残存率が高いと、その分大量のトリプシンが分泌されてそれをカバーするので問題ない、それが逆に健康に好影響をもたらす、という説もあるようです.参考:加藤昇の 大豆の話 2-27.トリプシンインヒビター
 
次に「大豆にゴイトロゲン(甲状腺腫誘発物質)が含まれているということ」が問題として挙げられています。これについては初耳でしたが、おそらく世界一大豆をよく食べる日本人に甲状腺腫が多いという話は特に聞きませんので、気にする必要はないでしょう。
 
こうした細かな化学的成分の話は素人にはわかりませんので、そういうときは一歩引いて遠くから眺めてみることで、ことの理非が見えてきます。
 
また「フィチン酸塩」が「ミネラルの吸収を阻害」することも問題視されています。フィチン酸塩がミネラルの吸収を阻害するのは確かで、よく問題視される玄米のフィチン酸塩含有率が1.1%であるのに対し、大豆は3.6%とそれ以上にずいぶんと多くなっています。
 
しかし、玄米の長期連用によるミネラル不足で過食になるなどした経験があるわたしですが、豆腐を食べたり豆乳を飲んだりした後で、玄米を食べた後のようなミネラル不足感を感じた経験はありません。わたしは玄米を食べた後や大量に汗をかいた後などにミネラル不足からくる飢餓感に苛まれることがある、という体質の持ち主なのですが、そのような飢餓感を、大豆製品の摂取によって感じたことはないのです。食べる量が主食である米と比べて少ないためか、あるいは加工の過程でフィチン酸塩が分解されるからか、明確な理由はわかりません。いずれにせよ、ミネラル不足を引き起こす作用は、玄米に比べてもはるかに弱いので、気にするほどのことはないというのがわたしの見解です。
 
次に大豆が含む植物性のエストロゲン(=一般的には大豆イソフラボンと呼ばれています)について考えてみましょう。エストロゲン(女性ホルモン)のようなホルモン類はごく微量で人体に作用し、また外部から入ることで内部のホルモンバランスを攪乱してしまうため、摂り過ぎは危険であると考えられています。しかしほどほどの量であれば問題なく、いくつかの実験の結果から、大豆イソフラボンの安全な1日の摂取目安量の上限は1日70~75mgとされています。
 
参考:イソフラボンの過剰摂取は副作用が懸念されるので摂取量に注意
 
朝・昼・晩とも味噌汁を飲み(味噌約20g=イソフラボン9.9mg)、朝ごはんに納豆1パックを食べ(納豆50g=イソフラボン36.8mg)、昼ごはんに豆腐を1/3丁食べる(木綿豆腐100g=イソフラボン23mg)として、イソフラボンの合計が69.7mgですから、このくらい食べても問題ない、ということになります。
 
参考:摂り過ぎてもNG!大豆製品の一日の目安量
 
では、子どもの場合はどうでしょうか? 子どもの血中のエストラジオール(女性ホルモンの代表的成分)濃度の正常値は1.5ng/dL未満だそうですが、それが10ng/dLや、4.8ng/dL、あるいは3.5ng/dLに上昇するだけで、2歳~8歳の少年の乳房が女性化するなどの症状が現れることが観察されています。
 
出典:エストロゲン・クリームの子どもへの有害性
 
しかし、子どもに豆腐を食べさせたり、子どもに豆乳を飲ませたからといって、子どもの乳房が女性化した、という話は聞いたことがありません。大豆イソフラボンに女性ホルモンと似たような作用があるとはいっても、同じ量で同じ作用がある、というわけではなく、その働きはずっと弱いのではないでしょうか。
 
マコーラ医師は「大豆の人工乳の類について強調したいことは、2万倍の量のエストロゲンが確実に子供たちの血流に入り込む」としていますが、これはおそらく大豆イソフラボン1mgが、エストロゲン1mgと同じだけの働きをする、と仮定して計算していると思われます。しかしその仮定が間違っているに違いありません。女性ホルモンの量が10倍になっただけで乳房が女性化するのに、2万倍になって何も起こらないはずがないからです。
 
このように、マコーラ医師の言い分を真に受けることはできませんが、一応用心しておくのはよいでしょう。子どもにとって最良なのが母乳であることはいうまでもありませんが、どうしても母乳育児できない事情がある人は、母乳と比較的近い牛乳をベースにした粉ミルクを使うほうが自然に近いといえるかもしれません(そもそも大豆を使ってつくられた赤ちゃん用粉ミルクは日本ではあまり販売されていないかとは思いますが)。
 
マコーラ医師は「豆乳は危険な毒物であるマンガンとアルミニウムを高レベルで含んでいます」とも述べています。念のため食品成分表で調べたところ、アルミニウムについての記述はありませんでした。マンガンについては、豆乳100g中0.23mgですが、それを他の食品と比較してみると、玄米ごはん100g中1.04mg、白米ごはんでは0.35mgであり、特に高いとはいえないことがわかります。
 
さらに、大豆たんぱくなどの製品には「大量のグルタミン酸ナトリウムが添加されています」とマコーラ医師は書いていますが、原材料欄を見て、そうした添加物のない製品を選べばよいだけの話です。
 
マコーラ医師に対する反論はこの辺で終えることとし、最後にマクロビオティックの陰陽の観点からの注意点を述べておきます。豆腐も豆乳も陰性の食品で、特に豆乳は極陰性といってもいいほどです。摂り過ぎれば体を冷やし、免疫力の低下をもたらしますので、ほどほどにとどめておくのが肝要です。豆乳は前述したとおり、ゴクゴクと飲むのは避け、スープやホワイトソース、あるいはお菓子などに少量使うにとどめるようにしましょう。豆腐は一度に摂る量は100g程度にとどめ、本当に暑い真夏の一時期を除いては冷ややっこにせず、温めて食べることを心がけましょう。豆腐よりは高野豆腐のほうが、干してある分陰性が弱くなっています。
 
お米は穀物の中では比較的たんぱく質の少ない部類に属しますから、大豆のような高たんぱくの食品と組み合わせて食べるほうが、栄養バランスが良好になります。「菜食が健康によい」と思い込んでしまい、お米と野菜しか食べなくなってしまう人がときどきいますが、たんぱく質が不足して貧血になったり、やせ過ぎてしまったり、生理が止まってしまうこともあるので注意しましょう。お米を主食にし、もしも肉や魚を食べないという選択をするならば、たんぱく質不足を防ぐため、おかずに多少の大豆製品は欠かせない、ともいえるでしょう。
 
お米と大豆は日本人のもっとも基本的な食料です。発酵した大豆食品を積極的に摂り、また発酵していない大豆食品もほどほどに食べていれば、きっと健康が維持できるはず。どうぞ安心してくださいね。

 
tofu and soybean