カシューナッツ、アーモンド、くるみ、マカダミアンナッツ……ナッツ類には、食べ出したら止まらないおいしさがありますね。ナッツは、さっぱりしがちなベジタリアンの食生活をリッチなものにしてくれるありがたい存在でもあります。お腹が空いたときにはコンビニでナッツを買う、という人も結構いるのでは。添加物だらけのコンビニの食品の中で、唯一添加物が入っていない(またはほとんど入っていない)のはナッツ類だけ、ということも多いですね。
でも、そうしたナッツ類は、ピーナッツを除いてほとんどが外国産。そして有機のものはコンビニでは見かけませんし、売っていたとしてもかなり高価です。
お米も野菜も有機のものを買っているから、ナッツくらい有機じゃなくても、ま、いいか、くらいに思っていたのですが、先月の有機農業映画祭でインドのカシューナッツ農場に関する映画を見て以来、その考えを改めました。
その映画のタイトルは『毒のサイクル』。
カシューナッツの産地である南インドのケララ州は、類い希れな美しい自然を誇り、神の国と呼ばれたといいます。ところが、カシューナッツ農場に、農薬エンドスルファンが使用されるようになってから、その美しい自然に変化が起こり始めます。まず蜂が消え、ついで犬、鶏、そして蛇が死ぬようになりました。その頃になると、人々の健康にも影響が現れ始めます。奇形児や脳性小児麻痺の子どもが生まれるようになり、ひどい皮膚病に冒される人、生まれたときは元気だったのに、途中で寝たきりになってしまう人なども現れるようになりました。
たとえば、水頭症の男の子。小さな体に膨らんだ巨大な頭、寝たきりで何もできないまま、大人を見上げるあどけない無邪気な表情……見るだけで胸が痛みます。
ケララ州の中でもカシューナッツ農園の多い地区カサラドゴでは、40%の人がなんらかの神経疾患に冒されているといいます。
農薬エンドスルファンがアメリカで認可されたのは1954年。それからほどなくしてインドでも使用が開始されたようですが、インドで人々の健康被害が顕在化したのは1991年からだといいます。エンドスルファンが農場労働者や野生生物の神経系や生殖機能に悪影響を及ぼすことが明確になり、米国での使用が禁止されたのは、やっと2010年になってのことでした。このように、農薬の害が明らかになるのは、使用開始から何十年も経ってから。使用禁止に至るのはさらに十年以上経ってから、ということが多いのです。その間に環境は汚染され、野生生物は激減し、人々の間には取り返しのつかない健康被害が広がっていきます。
2010年に農薬エンドスルファンの使用がアメリカで禁止されてからも、なおアメリカの23の州ではこの農薬を製造し続け、海外へと輸出しています。そしてそれはインドでカシューナッツに使用され、そのカシューナッツをアメリカが輸入することで、アメリカ人の口にも入るのです(メキシコ、アルゼンチン等、他の国にもエンドゥルファンは輸出されています。日本ではアメリカ同様2010年に使用が禁止されています)。映画のタイトル『毒のサイクル』は、アメリカが輸出した農薬が、作物に残留する形で最終的にアメリカに戻ってくる、というサイクルのことを示しています。
農薬を売って儲けたい企業と、それと結託して動く政治家たちのせいで、そのサイクルを断ち切ることができずにいるのです。このように害が明らかになった農薬は、製造そのものが禁止されるべきではないでしょうか。もちろんカシューナッツは日本にも輸入され、残留する農薬エンドスルファンとともに、わたしたちの口にも入るのです。
残留する量はおそらくわずかで、それを食べたからといって、わたしたちが水頭症になったり、寝たきりになったりするわけではないでしょう。でも、その生産現場では、環境が汚染されて野生生物が激減したり、さまざまな病気に苦しむ悲惨な人々が生み出されたりしています。そんな悲惨な現実の加害者にはなりたくありませんよね。
となれば、やはりカシューナッツは有機のものを買いたいですし、他のナッツだって似たようなことが起きている可能性を考えれば、やはり有機のものを選びたいものです。
念のため、いくつか有機のナッツを買う方法を挙げておきますね。
有機または化学合成農薬不使用のナッツ類通販
(有機カシューナッツ(生) 100g 451円)
(有機カシューナッツ(生)100g 464円、1kg 4590円)
★ローフード+有機食材専門店「Living Life Market Place」
(有機カシューナッツ(生) 350g 2,376円)
★通販カタログ「安全スタイル」(0120-430-288)
(品番MS072 有機栽培ローストカシューナッツ(塩入り)80g 720円+税)
映画の最後にはダライ・ラマの講演会場で、この映画の監督が質問をする場面がでてきます。「人々の健康や環境を悪化させてまで行う経済活動、資本主義について、仏教的観点からお考えをお聞かせください」と問うと、ダライ・ラマは「市場主義は搾取である。大きな経済格差があり、金持ちは利益ばかり追求する。人々を教育することが大事。あなたが知ったことを、ぜひ世界の人に伝えてください」というような内容を答えます。
自分の知ったことをなるべく多くの人に伝えたい、そして少しずつ仲間を増やしていって、食から社会を変えて行けたら、とわたしも思います。
映画『毒のサイクル』予告編→https://www.youtube.com/watch?v=wAq2JraCbL0
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