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映画「大地と生きる」を見て(有機農業映画祭2019ご報告)

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今年の有機農業映画祭で印象に残った作品をご紹介します。

「大地と生きる」はフランス農業の新しい動きを追った映画。

EUは日本と違って補助金をきちんと支給することによって農家を手厚く保護している、と聞いていたのですが、意外なことに補助金制度の対象となるのは、大規模農家だけなのだそうです。3haのオーガニック農園を経営するリンダは補助金の対象外。農薬を使わないリンダは「わたしたちこそが、水・空気・食という社会の共有財産を守っているのに。不公平だわ」と嘆きます。

リンダが取り組むのはアグロフォレストリー。農園に木をたくさん植えるのが特徴です。木の根が土を耕し、作物の成長に適した土づくりをしてくれるといいます。そして落ち葉は土に還り、それがまた作物の栄養にもなるのです。高価な機械などに大規模投資しなくても、常識と工夫、少しのお金で十分採算が採れる、とリンダは語ります。20家族が前払いの契約で、彼女の農作物を引き取り、農園の経営を支えています。

「20年農家をやってきたけど、4年前初めて土に触ったよ」と語るのはオリヴィエ。オリヴィエはリンダとは違い、経営コンサルタントなどに勧められるまま、大型機械を購入し、農地を拡大し、と大規模化と効率化をひたすら目指してやってきました。しかし、投資は際限なく必要となるのに、それに見合うほどの見返りはありませんでした。ある時、収量が以前より下がっていることに気づきます。地力が落ちてきていたのです。

初めて触った土には蟻やダンゴムシなどさまざまな虫たちがいて、それが土を耕してくれていることに気づきました。そうした虫や微生物などの働きを妨げないよう、オリヴィエは土を耕すことをやめました。4年経った今、土の中の生命がよみがえり、収量が上がり始めているといいます。昔は触ることもできなかったミミズですが、今のオリヴィエにはいとおしくてなりません。

耕起によって、4秒ごとに1haの土壌が失われているという試算もあるとか(? 数字が違っていたらすみません)

「トラクターを運転する燃料代も減ったし、農薬もかなり減らすことができた。殺菌剤、殺虫剤の大部分をやめたよ」と語るオリヴィエは、土の中の生態系を復活させると同時に、経済性を確保することにも成功しました。

バランタインは都会での官僚の生活を捨て、故郷に戻って父親のぶどう畑を継ぎました。通常のぶどう園では大量の農薬が使われています。欧州一の農薬大国であるフランスは「農薬使用量の半減」を目標に掲げましたが、半減どころか、微減すらせず、その後も農薬の使用は増え続けているといいます。そんな中、バランタインは農薬を一切使用せず、緑肥と植物を煎じた液で農地の復活に取り組みました。

シダ、コーンフリー、スギナ。これがバランタインの処方箋です。これらを摘んで、煎じた液を農薬代わりにスプレーして周ります。父親は有機農法にはこれまで関心がなく、息子のやることにも半信半疑でした。しかしそんな父親の目にも、実際にぶどうが元気になり、勢いよく成長するようになったことは明らかです。緑肥と煎じ液が、畑を回復に導いたのです。

「『あなたが有機農法に取り組むなんてね!』と周囲の農家から笑われるのさ」父親は語ります「その俺ができるくらいだから、誰にだってできるよ」

偏見や先入観さえ捨て去れば、有機農法はむずかしくない、ということではないでしょうか。

大地と生きる

11人もの仲間でひとつの農園を経営する若者グループもいます。80haの農園で彼らは8つの事業に取り組んでいます。野菜、牛乳、山羊と牛のチーズ、豚肉、パン、ビール(あと2つは何だったか忘れました……ワインもあったかな?)。

20代後半の彼・彼女らは、農業学校の仲間同士。助け合いと機械の共有が基本で、リスクを分かち合うため、給与は全員同じです。

「昔から山羊に関わる仕事がやりたかったの。牛は大きすぎるし、羊は気難しい。山羊が大好き」と語る彼女は山羊チーズ担当。「酪農家なのに、週末休めるなんて最高よ」と語ります。

11週に1回の当番の時だけ、週末も農園に残って山羊と牛の世話をしなければなりませんが、それ以外の週末は休みが取れるのです。家畜の世話で1年中休めない一般の酪農家からすれば、たしかに垂涎の労働環境といえるでしょう。

料理当番も毎日2人ずつ交替で勤めます。「おいしくて健康によい食品を提供する仕事をしているのに、自分たちの食事がいい加減なものだったら、それはおかしなことだから」と、料理にも手を抜きません。自分たちの農園で採れた素材で、おいしそうな料理がズラリと25人分(雇い人もいるということか?)テーブルに並びます。「最初は大勢の料理をつくるのがすごく大変に感じたけど、今ではちょっとだけ作るほうが逆に大変」毎日がパーティーのようです。

農園の直売所とバーには外部の人々も集まってきます。彼らが選んだのは田舎の過疎地でしたが、そこで彼らは大いに歓迎され、その地域に新たな活気を生み出す原動力となっています。

有機農業の意義と新しい可能性を感じる、有機農業をやってみたくなる、そんな楽しさに満ちた映画でした。

「オーガニックな食材こそが健康の基本。
料理だけでなく、それを支えてくれる農業のことまでもしっかりと知っておかないと、健康は守れません」

美絵似顔絵イラスト
自然療法家 安田美絵

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