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斑点米農薬防除をやめて安全な米とミツバチを守ろう市民集会のご報告

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2014.11.5(水)に衆議院議員会館第2で催された「斑点米農薬防除をやめて安全な米とミツバチを守ろう市民集会~危険なネオニコチノイド系農薬とコメ流通のしくみを知る」に招かれ、5分ほど話をしてきました。ほかの登壇者の方からも、興味深い話がたくさん聞かれましたので、その内容をご報告します。

稲穂(IMG_0836)
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●「斑点米」とは
カメムシがコメの汁を吸うことで、米に黒っぽい斑点ができてしまいます。見た目が悪くなるので(安全性にはまったく問題ありませんが)、米の格付け検査の際に2等米とされ、安く買いたたかれてしまいます。しかし、実際には斑点米は色彩選別機で簡単に取り除けるため、この検査規定はまったく無意味なものとなっています。

カメムシ-01

国産米の検査規格では、0.2%以上斑点米が混じっていると2等米となります。でも、異物の混入で2等米とされるのは異物が0.4%以上混入した場合。食べてもなんの問題もない斑点米よりも、小石が混じっている率のほうが高くてもよい、というのはまったくナンセンスです。

しかも、輸入米では着色した粒が1%までなら合格とされています。国産の1等米は0.1%までとされているのに。外国産のものに対しては10倍も基準を緩くしてあげるなんて。なんでそんなに外国産だけを優遇するのでしょう。このダブルスタンダードも許せません。

●「ネオニコチノイド系農薬」とは
日本の農家は2等米とされると安く買いたたかれて困るので、カメムシがコメにつかないよう、一生懸命農薬を使うことになります。そこで利用されるのがネオニコチノイド系農薬です。ネオニコチノイド系農薬は、昆虫の神経系に作用し、記憶喪失、食欲減退、方向感覚の喪失、免疫系の崩壊などを引き起こします。

そのネオニコチノイド系農薬の被害をもっとも顕著に受けているのが蜂です。世界中でハチが巣に戻って来られなくなったり、大量死したりしています。農水省はさる6月20日に、ネオニコチノイド系をはじめとする農薬がミツバチ大量死の原因となっていることを認めました。

ハチの大量死(P25)

 

市民は「コメの検査規格の見直しを求める会」を結成。ネオニコチノイド系農薬の使用を農家に間接的に強制する、無意味な斑点米検査規格を外すよう訴えています。

●どうしてカメムシが「指定有害動植物」とされるのか
また、市民グループは斑点米の原因となるカメムシ対策のために農薬を使うのをやめること、植物防疫法の「指定有害動植物」の指定から斑点米カメムシ類を外すことも求めています。

カメムシは生産量に大きな被害を及ぼす「有害動植物」には当たりません。斑点米除去によるロスは玄米価格11000円/60kgの場合、59.4円に相当。 一方農薬を2回散布した場合の農薬代は300円/60kg。これに加え無人ヘリの料金がかかります。農薬散布のほうがはるかにコストが高いのです。

この規定は農薬を売りたい「農薬ムラ」のために存在するものだ、との指摘(秋田県大潟村の農家、今野茂樹さん)は的を得た鋭いものだと思われます。

その他の方のお話しから
●桐谷啓治氏のメッセージ
「害虫」が辞書に現れたのは20Cになってから。
今は害虫と益虫を除く虫の82.2%が「ただの虫」とされているが、昔は虫はみな「ただの虫」だった。益虫の餌として害虫も多少は必要であり、害虫も数が多すぎなければ、なんら害はなし得ない。

すべての生物の密度を、異常でない普通の範囲に管理できれば、すべての虫は「ただの虫」となり、使用する農薬も必要最小限になる。このような管理の仕方を 総合的生物多様性管理(IBM:Integrated Biodiversity Management)と呼ぶ。これからはそれを目指したい。

●ジャーナリスト岡田幹治氏
世界中でネオニコチノイド規制は進んでいる。やがて「第二のDDT」となるのでは。(DDTは登場当初は人体に害のない「夢の 農薬」とされ、発明者にはノーベル章まで与えられたが、次第にその害が明らかになり、今では史上最悪の化学物質POPsのひとつとされる)

毒性は即時的なものから慢性的なものまである。土壌中にも水中にも長期間残留する。被害はミミズなどの陸生無脊椎動物、ハナバチなどの受粉昆虫、淡水貝などの水生無脊椎動物、鳥類、両生類、微生物など広範囲に及ぶ。

人への影響でみれば、致死性は有機リン系農薬とほぼ同等かそれ以上。連続経口摂取により毒性が発現し、中毒を起こすことがある。血液脳関門を通過し、神経毒性、発達神経毒性がある。

●養蜂家、後藤純子氏
女王蜂は昔は3~4年は生きたものなのに、今は1年しかもたない。農薬をまくときは事前に通知するからミツバチを移動させろ、などと言われるが、移動させるのはとても大変。ミツバチは早起きなので、真夜中に作業するのを強いられる。

農薬は1000倍に薄めてまく、とされているのに、農家は「8倍にしてまく」と、養蜂家に通告。「1000倍と決まっているのでは?」と突っ込んでも「効果をあげたいので、8倍にします」と言って譲らない。それで安全なの? まく人は? 米を食べる人は?

●有機農家、舘野氏
農薬で害虫が減るなら、毎年まいていれば、もう絶滅してもいいはず。現実には、農薬のついた害虫を食べるせいか、(生物濃縮の影響を受けて)益虫の減少のほうが激しい。害虫は一向に減らない。農薬で害虫は減らせないということをいい加減思い知るべし。

現代では新米が高く売れるため、早く収穫しようと、早く田植えをする農家が多い。ほとんどの農家がゴールデンウィークの頃に田植え。しかし昔ながらの6月ごろの田植えのほうがいい。カメムシ発生のピークとずれが生じて被害を受けにくくなるからだ。

●NPO理事長、原耕造氏
田んぼの生きもの調査をやっていて、慣行栽培(すなわち農薬を普通に使っている)の田んぼと、特別栽培(その地方で通常使われる 量と比べ、農薬と化学肥料を半分以下にした)の田んぼを比べてたら、慣行栽培の田んぼにヤゴがうじゃうじゃいるのに、特別栽培の田んぼにはまったくいない ということがあった。特別栽培の田んぼにいったい何をしたの? と農家に聞いたところ、ネオニコチノイド系農薬を使った、ということだった。農薬をまく回 数が少なければ特別栽培を謳えるので、散布回数が減らすため、効き目の強いネオニコチノイド系農薬を使う。しかし害はそのほうが大きい。

●ルナ・オーガニック・インスティテュート 安田美絵
化学物質過敏症患者で小田原に住んでいる人は、果樹の花に農薬を散布する時期になると体調が悪くなり、東京に避難せざるを得ない。ほかにも、息が苦しくなって病院で「中枢神経が通常の半分しか機能していない」と診断された人もいる。

昆虫の神経系と人間の神経系は違うからネオニコチノイド系農薬は人間には無害、などとされてきたが、それは机上の空論。化学物質過敏症患者は社会のカナリ アだ。次は子どもに害が出る。地方の保育園などでも、農薬をまく時期になると、子どもが発熱、咳、下痢、多動、大人でもめまいなどを起こすという例が報告 されている。

一時だけで済めばよいが、感受性の強い子どもの脳は悪影響を受けて完全に回復しないこともあり得る。一刻も早く使用を中止すべき。
生物多様性は人類の生存基盤でもある。蜂が絶滅すれば、受粉を蜂に頼る植物も絶滅し、巡り巡って人類絶滅にもつながる問題。重く受け止めよう。

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菜の花とハチ(P24)

なお、この集会でグリーンピースの方も話をされましたが、グリーンピースではネオニコチノイド系農薬の残留基準緩和の撤回を求める署名をやっています。

http://www.greenpeace.org/japan/nico2/

まだの方はぜひご署名ください。

日本の農業を、虫たちを、食の安全を、そして人類の未来を守りましょう♪

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