種子法についてのシンポジウム11.19@栃木ご報告

2017.11.19、栃木県上三川町の「有機農業推進フェア」において、元農水大臣の山田正彦氏、NPO法人めだかの学校の中村陽子氏などを招いて、 「シンポジウム―種子法廃止の意味と議員立法『主要農作物の生産振興に関する法律案」について-』が開かれました。
「サルでもわかる種子法廃止」の中でも書きましたが、来年4月の廃止が決まった主要農作物種子法は、都道府県に稲・麦・大豆の奨励品種の選定と種子の生産を義務付けるもので、これが廃止されてしまうことで、安定的な種子供給が確保されなくなる恐れがあります。
この問題に関するシンポジウムにはこれまで何度か参加してきましたが、県の農業試験場に勤務されていた山口正篤氏から、実際の業務の詳細や役割について伺えたのは新鮮でした。

種子法が都道府県に課している「奨励品種の選定」という業務の重要性を山口さんは強調されます。
奨励品種を決めるには、予備試験→本試験→現地調査→食味調査という段階があり、全部で7~8年から十数年の時間がかかるとのこと。
栃木県が全国でもいち早くコシヒカリを奨励品種としたのは今からちょうど60年前の昭和32年。そもそもは収量が高く、また寒い地域でも育つことから、標高の高い那須高原などでも大丈夫、ということで採用されたそうです。コシヒカリは現在の栃木では10アール当たり7~8俵から9俵くらい採れるそうです。
ところが昭和50年代には麦畑から飛んできたヒメトビウンカによって稲に縞葉枯れ病が蔓延し、収穫が10アール当たり3俵にまで落ち込んでしまったといいます。
そのときに決め手となったのがホシノヒカリという新品種。それを奨励品種として導入したことで病気の蔓延が止まり、かつ収量も上がって、麦跡の栽培(一般的には収量はやや落ちる)にも関わらず、十一俵/10アールという記録まで出たほどだったといいます。
このように奨励品種の選定は、地域の稲作を支えるうえで大きな役割を果たしているのです。

また、タネの生産がいかに繊細さが必要とされる作業か、ということも語られました。
ある品種のタネを生産する際に、他の品種のものが少しでも混じってしまうと大問題になるといいます。1%混じっても、10アール当たりでは一千本となり、とても許容できるレベルではありません。ナスヒカリという地域の品種にコシヒカリが1%程度混じってしまったことがあり、そのタネはすべて廃棄処分にされたとのこと。
異品種の混入は0.01%以下という厳しい水準が要求され、それを達成するために、稲穂の管理は大変な神経を使う作業だそうです。

また、別の年にはタネの生産方法に問題があったため、発芽率が著しく悪くて大問題となったこともあるといいます。

種の生産を民間に委託した自治体もありましたが、結局うまく行かずに、また県がその業務をやるようになった、という話もあるそうです。

県が自分たちの農業試験場で開発した品種を奨励品種として選定することが、民間の業者が開発した稲の品種の販売を阻害している、という批判が一部にあります。しかし山口氏は、民間の業者がつくった品種を無視しているわけではなく、平等に試験をした結果として、よくないから選んでいないだけだ、といいます。みつひかりという品種は収量が多いというふれこみですが、大量の肥料を必要とし、肥料がなければ収量は増えない、味もよくない、だから検討したけれど、採用しなかったのだそうです。

こうした話を聞いていくと、国が来年3月いっぱいで種子法を廃止し、自治体が予算を確保する根拠を失って奨励品種の選定と種子生産業務から撤退してしまう可能性が出てくることは、非常に危険なことのように思えます。

そこで、この事態を憂える人々の間では、種子法に代わる新しい法律を制定しよう、という動きがあります。

その試案を現在作成中なのが、わたしが「有機稲作チャレンジ」でお世話になっている民間稲作研究所の稲葉光國先生です。

稲葉先生の「主要農作物の主旨の確保に関する省令(私案)」は、都道府県に種子生産圃場の指定、種子の審査、原種や原原種の生産、優良品種選定のための試験などの業務を課すもので、基本的には従来の種子法と大きく変わるものではありません。一番大きな違いは、「主要農作物」の定義として、稲・麦・大豆に加えて油脂作物も加わっているという点です。
現在の日本における食用油脂の自給率はわずか3%しかなく、このことに危機感を抱いての案となっています。

同時に「主要農作物の国内生産の振興に関する法律(私案)」もつくっておられ、その目的には「安全な国産の主要農作物を安定的に生産」するだけでなく「国民の健康と良好な農村環境を守る」ことも掲げられています。

基本理念には
「種子は先達からの貴重な農業遺産であることを鑑み、国および県はその保全と普及に努めなければならない」
「できる限り消費地に近いところで生産を行い、新鮮なうちに消費することが人の健康を維持するための必須の条件である」
「(主要農作物は)多くの農地面積を要することから、その生産方法が地域の自然環境に影響を与え(中略)ることから、環境への負荷をできるだけ軽減した方法で行われることが望ましい」
「日本の農業は(中略)分散耕地制を特徴とすることから、遺伝子組み換え大豆を栽培する農家があった場合、容易に他の消費者の大豆に花粉が虫・風媒され、被害を与えることから、遺伝子組み換え大豆の国内栽培は禁止とする」
「内外価格差を解消することを基本とした日本型の直接支払い制度を充実させ、農政の基本に位置付けることとする」

など大変納得のいくすばらしい理念や、農家を支えるための具体的な手段が並んでいます。

わたし個人としては大豆だけでなく遺伝子組み換え作物はすべて禁止としたいところです。
大豆が自家受粉植物であるのに対し、とうもろこしは多家受粉で、しかも大豆以上に長距離を花粉が風で飛びますし、なたねは同じアブラナ科の多種多様な野菜(キャベツ、白菜、大根、かぶ、小松菜など)と交雑する危険性があり、大豆以上に危険であるためです。
しかし、法律で禁止するのはなかなか難しいとも聞いていますので、許認可制にするほうが、現実的かもしれません。
半径100㎞以内に農家が存在しないこと、などの規定を設ければ、現実的には許可が受けられず、栽培不可能となるでしょう。

種子法に代わる新しい法律を求めるための署名はこちらでぜひどうぞ。

「サルでもわかる種子法廃止」もあわせてご覧ください。

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