田植え機運転初体験!~有機稲作チャレンジ@栃木

生まれて初めて、田植え機を運転してきました! 栃木で先月から参加している「有機稲作チャレンジ」第2回目のプログラムです(2017.6.18)。

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手で植えるのは何度かやったことがありましたが、機械を操作するのは初めて。車の運転もできないわたしは「クラッチってなんですか?」とか「左後ろに行きたいときはハンドルは右に切るんですよね?」というような超初歩的質問で、周囲を困惑させつつ(笑)も、他の皆さんの運転の様子をじっくりと観察させてもらい、なんとか操作の方法を飲み込んで、無事に1列?(4条)植えることができました。

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田植え機にはレバーが3つ。ひとつのレバーは上にうさぎマーク、下に亀マークが付いていて、速度を表していることがわかります。(「ここは動かさなくていいから」といわれました)もうひとつのレバーは苗を植える部分を上下させるもの。Uターンするときにはこの部分を持ち上げて苗を植えないように操作します。そしてもうひとつが「前進←中立→後進」のレバー。

基本的には操作するのは2つのレバーとハンドルだけ。あとは、植えるべき苗がなくなったら、いったん止まって、機械の上部に積んである苗を手で下して補充します。

参加者の中には、苗の補充のときも止まってはいけないと思い込んでしまい、そのまま前進を続けた人がいて、しかし、そうするとハンドル操作ができないため、まっすぐに進めず、ぐちゃぐちゃに列が曲がってしまったところもありました(笑)。

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機械を放っておけばまっすぐに進みそうな気もしますが、田んぼの土が完全な平面ではなく、ところどころ微妙な傾きがあるため、ハンドル操作をしないと曲がってしまうのです。
また、Uターンの仕方が下手だと、前の4条と後の4条の間に隙間が空いてしまうという問題も生じます。
結果、わたしたち初心者ばかりが植えた田んぼは、隙間あり、ジグザグ部分あり、とかなりハチャメチャな仕上がりとなりました。
日ごろ電車の窓などから目にする田んぼは真っすぐに等間隔で稲株が並んでいて、それが当たり前と思っていましたが、機械を使っても、まっすぐに植えるには人間の技術が要るのだ、ということを初めて思い知らされたことでした。

 

苗は約1か月前に自分たちで(機械を使って)タネを蒔いたもの。まずはパレットの下にはみ出した根を切るため、2人でパレットの両側に立って、ワイヤを横に引いていくのですが、これが結構な力作業となります。

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それからトラックに載せて田んぼまで運びました。

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田植え機には、苗を植える間隔を調節できる装置も付いています。どんな間隔で植えるかは、稲葉先生の厳密な計算で割り出されたもの。

その厳密な計算とは……
通常コシヒカリは16枚の葉を付けるが、麦を植えた跡につくると13~14枚となる。そのうちの真ん中の6枚のところから分けつが起こり、1株の苗から15~19本の穂が出る。
1本の穂にできる米粒は5月の田植えなら140粒程度。麦跡につくると田植えが遅くなるので120粒程度。
1粒の米ができるためには、稲の葉が1.3c㎡必要。
120粒の米粒をつくるためには、1.3×120=156c㎡の葉が必要。
それぞれの土地の日照時間や気温によって、1㎡当たり、どれだけの葉を茂らせることができるかは限界が決まっていて、栃木だと1㎡に45000c㎡の葉ができることがわかっている。
45000c㎡÷156c㎡=288本の穂が1㎡にできる。
麦跡に植えた稲1本に平均16本の穂がつくとして
288本÷16本≒18株 を1㎡に植えるのが適当ということになる。
田植え機では平米あたりでなく、坪当たり何株かで目盛りを調整するようになっているため、(1坪は3.3㎡)
18株×3.3≒60株 となる。
というわけで、田植え機のギアを1坪当たり60株に調整して田植えを行ったのでした。

麦の収穫後に麦わらを畑に漉き込んで、そのあとに米をつくるのですが、そうすると稲が一時期真っ黄色になってしまうのだそうです。
稲わらには窒素分が少なく、それを分解するために微生物が働いて増殖すると、微生物の体をつくるために窒素が取られてしまうため(微生物の体の40%がたんぱく質で、たんぱく質の約1/6が窒素であるため)、土の中の重要な肥料分である窒素が不足するという状態=窒素飢餓に陥ります。

窒素が多いと緑色が濃くなり(それはそれであまりよくないのですが)、窒素が足りないと黄色くなるのです。
そこで、窒素飢餓を防ぐために、くず大豆(虫食いなどで売り物にならない大豆)も土に漉き込みます。大豆はたんぱく質豊富で窒素分も多いので、これで十分に窒素が補給できるのです。
窒素と同様重要な肥料分がリン酸ですが、これはグアノ(海鳥の糞が固まってできた化石。インドネシア産)を撒くことで補給しているそうです。

化学肥料の窒素分として一般的なのは「アンモニア態窒素」と「硝酸態窒素」ですが、コシヒカリはアンモニア態窒素は吸収せず、アミノ酸態窒素(有機肥料の中に存在)を吸収して育つとのこと。アンモニア態窒素は火薬の原料にもなるため、戦時中は肥料にする分が不足し、そのために化学肥料がなくても育つ品種としてコシヒカリが注目を浴び、広く普及するに至った、といういきさつも初めて知りました。コシヒカリはもともと有機栽培に向く品種なわけですね。

一時期コシヒカリと並ぶ人気を誇ったササニシキは、イモチ病に弱いのが欠点だとされているそうですが、稲葉先生によれば、イモチ病は密植すると発生するもので、坪当たり1500本以上植えるとかかるとのこと。以前、1~2本植えが普通だったときは、問題にはならなかったのが、田植え機の普及によって4~5本植えが一般的になったことによって、イモチ病に弱いというレッテルが貼られることになってしまったそうです。

ササニシキと味は同じだがイモチ病に強い、というのが売り文句の「ササロマン」という品種は、翌年の梅雨を過ぎると味が落ちてしまうし、そんな中途半端な品種を使わなくても密植しないよう注意すれば、イモチ病は防げるとのこと。

ササロマンと同じ考えでつくられたのがいもち病に強いというのが売りの「BLコシヒカリ」。いもち病に強い品種の稲とコシヒカリとを掛け合わせて、さらにそれをコシヒカリと掛け合わせる、という戻し交配を何度か繰り返してコシヒカリに近づけた品種だそうです。いもち病に強い品種は20種ほどあり、そのうちの10品種を選んで、ミックスし、種もみとして販売するのだそうです。そしてその10品種の内訳は毎年変わっていくのだとか。BLコシヒカリという名前が付いていながら、中身は10品種のミックスであるため、熟す時期も背丈もバラバラで、農家にすればとても栽培しにくい品種なのだそうです。そして、味が落ちやすい、という点もササロマンと同様です。

栽培のしかたに気を付けるだけで病気は防げるのに、そこにちっとも目を向けようとせず、品種開発や農薬でそれを防ごうとするのは愚かしいことですね。

最後にひとつ驚いた話を。稲の検査員という人達がいるのだそうですが、その人たちは玄米を見ただけで、それはコシヒカリなのか、ササニシキなのか、あるいは他のものなのか、を判別するのだそうです。食べることもなく、顕微鏡も使わず、肉眼で見ただけで判別できるって、すごいことですね。一体どんな特徴を見分けているのか、わたしには想像もつきませんが…。