子どもの発達障害の原因は?

学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、高機能自閉症など、いわゆる「発達障害」のこどもが急速に増えているといわれています。

その主因が農薬、特に1990年代から使われるようになったネオニコチノイド系農薬なのでは、という説を唱えておられる黒田洋一郎先生の講演を聞いてきました。

ネオコチノイド系農薬は、ニコチンと似た作用をもつ農薬で、昆虫には毒だけれども、人間などの哺乳類には作用せず安全である、という謳い文句とともに登場しました。

しかし、黒田先生は脳神経科学者としての立場から、昆虫の神経系と人間の神経系は基本的には同じであり、昆虫の神経にとって毒であるネオニコチノイド系農薬が、人間の神経には毒ではない、などということはあり得ない、と断言します。

農薬などの化学物質は、遺伝子そのものを損傷しなくても、その働きを攪乱することにより、シナプスの発達を阻害し、知能、認知、記憶、学習、対人行動、社会行動、子育て行動など、個々人ごとに異なる部分に問題を引き起こす場合がある、と黒田先生は説明します。

マウスの母親にネオニコチノイド系農薬のアセタミプリドを低用量経口投与する実験でも、仔の雄マウスの行動に異常が現れることが確認されています。

(マウスの母親(妊娠中~授乳中)に、アセタミプリド1.10㎎/kg体重/日 与えると、その仔マウスが不安を感じていることを示す行動をしたり、攻撃的な行動をとる)

黒田先生は、発達障害の原因となる環境要因として

1.脳内に侵入した発達神経毒性を持つ化学物質
2.出産前後のトラブル
3.養育期のトラブル
4.母体や新生児、乳児期の感染症

を挙げ、中でももっとも疑わしいのは1,に相当する農薬であるとして、その理由に以下のグラフを示されました。

IMG_6889

右の青いグラフは、単位面積当たりの農薬使用量。韓国に次いで、日本は第2位となっており、イギリス、アメリカがそれに続いています。

そして左の赤いグラフが、自閉症と発達障害者の割合。赤が自閉症で、ピンクがそれを含む発達障害者の数となっていますが、ここでも1位韓国、2位日本、3位イギリス、4位アメリカ、と上位4位は右のグラフと全く同じ順位となっています。

この一致こそが、農薬が発達障害の最大の原因であることを示している、と黒田先生はいわれます。

しかし、このグラフを見て、わたしは少なからぬ違和感を覚えました。アメリカよりも日本のほうが自閉症や発達障害が多いとはとても思えなかったからです。アメリカで自閉症が急増しているという話はよく聞きますし、発達障害児も増えていて、それに対する安易な薬の処方が問題視されているという話も聞きます。ただ、アメリカに行ったことがあるわけではないので、自分は単なるイメージでそう思い込んでいるだけなのだろうか……。それを確かめたくて、ネット上でデータを探してみました。

さまざまなデータがありますが、たとえば

◆AFP通信のサイト http://www.afpbb.com/articles/-/3069603 では
医学誌「Journal of Clinical Psychiatry(臨床精神医学ジャーナル)」に発表された今回の研究結果によれば、2011年には、米国の子どもと10代の若者を合わせたうちの12%がADHDと診断され、03年に同じ調査で保護者から報告された8.4%から大幅に増加していることが分かった。」

と記されています。

一方、

◆文科省のサイト http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/001.htm では、

「学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、高機能自閉症等、学習や生活の面で特別な教育的支援を必要とする児童生徒数について、文部科学省が平成24年に実施した「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」の結果(※資料(データ、通知、答申、報告書等)へリンク)では、約6.5パーセント程度の割合で通常の学級に在籍している可能性を示しています」

となっています。アメリカは2011年、日本は平成24年(2012年)の調査ですから、時期的にはほぼ同じ。これを比較すれば、アメリカではADHDだけで12%。日本はADHD以外の発達障害も合わせて6.5%ですから、日本のほうがだいぶ少ないといえるでしょう。

また

◆文科省のサイトの別のページ http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/044/attach/1299890.htm では、

「特別支援教育の恩恵を受けている障害のある子ども、SEN※のある子ども

英国: 20.1%(2009年) ※障害以外の学習困難を含む。

米国: 11.4%(2008年) ※全員障害を有すると判定されている。

日本: 2.3%(2009年) ※特別支援学校0.58%、特別支援学級1.26%、通級による指導0.5%の計

(参考)小・中学校におけるLD、ADHD高機能自閉症等の在籍率 6.3%(平成14年度文部科学省調査)」

とあります。
※SENとはSpecial Educational Needs(特別な教育的ニーズ)の意

特別な支援を必要としている子どもに必ずしも特別な支援が与えられているとは限りません。
文科省のこの表は、特別な支援を必要としている子どもが、日本に6.3%いるにもかかわらず、実際に支援が与えられている子どもは2.3%に過ぎないことを問題視するものでしょう。

いずれにせよ、文科省が日本で教育的支援を必要としている子どもは約6.3%と見ているのに対し、アメリカでは11.4%の子どもが障害があると判定されており、イギリスでも20%の子どもが特別な教育的支援を受けている……これもやはり、アメリカやイギリスには日本よりも発達障害児が多いことを伺わせるデータといえるのではないでしょうか。

また、もうひとつの違和感が、グラフの上位4か国が、本当に1位~4位なのかということです。
単位面積当たりの農薬使用量が2008年の時点で世界第一なのは中国です。
こちらのグラフ参照
黒田先生のデータはOECDのデータなので、加盟国でない中国が入っていないのはしかたないかと思われますが、オランダ、イタリア、フランスなど、英国やアメリカ以上に農薬使用量の多いOECD加盟国もあるのに、それが省略されてしまっています。

オランダやイタリアなどの発達障害の有病率のデータがなかったために、右のグラフでも省略してしまったのかもしれませんが、これを省略しておいて「左右のグラフの1位から4位までがまったく同じ」というのは、やや強引すぎるのではないでしょうか。

ネオニコチノイド系農薬が人間の、特に未発達な子どもの脳に悪影響を与えることについては黒田先生のおっしゃるとおりでしょう。それが発達障害の一因となっている可能性はもちろん十分に考えられます。しかし、上記のようなデータからも、わたしは、いわゆる「発達障害」の最大の原因がネオニコチノイド系農薬であるという説は、疑わしい、と考えます。

もちろん黒田先生の引用するデータも、きちんとした学術的なデータなのだとは思いますが、診断基準などちょっとした調査方法でデータは変わってくるものなのでしょう。さまざまな異なるデータの中で、どれに真実味を感じ、どれを採用するかについては、結局その人の主観が関わってきます。

わたしが「農薬が発達障害の最大の原因」説を否定するのは、その他の大きな要因を知っているからです。

それが、ビタミン・ミネラルなどの「微量栄養素不足」です。

そんな些細なこと? と思われる方もいらっしゃるでしょうが、実際に、不足していたビタミンやミネラルを食事で補給することによって、自閉症が治った、発達障害が治った、という子どもはたくさん存在しているのです。

その例を雑誌「暮らしと食品の安全」2017.7、No.339から引用しましょう。

「2016年2月号(322号)で紹介した小学1年生(当時)のKくんも、音に敏感に反応する聴覚過敏を抱えていました。

Kくんは、2歳半のときに『自閉症スペクトラム』と診断されています。

幼いころから友達の泣き声に過敏に反応して嫌がり、外出先でも小さな子どもの泣き声が聞こえると両手で耳をふさいでいたといいます。

Wild funny little boy

小学1年の4月からミネラル補給を開始。それでも、クラス全員で歌を歌うときには、大勢の歌声が響いて耐えられず、苦痛で教室に入れません。イヤーマフをつけることでなんとか過ごしている状態でした。

そこで、白米だけだったお米に発芽玄米を混ぜて炊いたり、顆粒だしをやめて、『無添加白だし』を使い、ナッツや小魚、煮干しも食べさせる回数を増やしました。

さらに10月からは、ミネラル補給を強化するため、食事日記をつけてもらいながら、いわし、あご、昆布の粉末である『天然だし調味料』やエキストラバージンオリーブ油を毎食使うようにすると、眠りが深くなり、朝食もしっかり食べるようになりました。

このミネラル強化を始めて1か月後の11月に行われた学習発表会では、聴覚過敏の症状にも明らかな変化がみられました。
前年までは、音が苦痛で、舞台の上で耳をふさいでしゃがみこんでいたのが、合唱やピアニカ、ダンスなど、以前だったらストレスに感じたものにも一緒に参加でき、始終、にこにこ笑顔でした。

1学期にはピアニカの音も苦手で、音楽室から飛び出すこともあったのに、発表会のために学校でもピアニカの練習に励んでいたKくんは、クラスの皆と一緒に歌を楽しめるようになったのです。

『大勢の歌声に耐えられなかったのに、すっと教室に入って一緒に歌い出したときには驚きました。不安で手放せなかったイヤーマフーも、最近はつけていなくても大丈夫になり、聴覚過敏は確実に緩和されています』とお母さん。
音の深いさが軽減されたKくんは、現在はお友達とのかかわりを楽しみ、意欲的な生活をしています。」(引用終わり)

このように、自閉症や発達障害は、「治る」ものなのです(すべての例が治るとは限りませんが、治る場合も多いということです)。

この大変に重要なことが、世間ではきちんと認識されていないのは、非常に大きな問題です。

ぜひ周りに自閉症や発達障害の子どもをもつ人がいたら、この事実を伝えていただきたいと思います。

具体的な改善の事例は以下の本にも多数載せられていますので、ぜひ参考にしてください。

『食べなきゃ危険!ー食卓はミネラル不足』小若順一、国光美佳、食品と暮らしの安全基金 著

『キレなくなった子どもたち』国光美佳 著

「発達障害」という言葉が一般的でなかった頃から、食事次第で人間の心は大きく変わってしまうということは、一部の人の間ではよく知られていました。

『キレない子どもを作る食事と食べ方』今村光一 著

『食事で治す心の病―心・脳・栄養 新しい医学の潮流』大沢 博 著

『給食で死ぬ!』大塚貢、西村修、鈴木昭平 著

なども大変参考になる本です。

また、自閉症とMMRワクチンと牛乳との関連について記した下記のサイトもひとつの参考になります。

「息子の自閉症が完治した」http://www.choicetheory.net/kcc/autism1.html

(多くの場合)子どもの発達障害を防ぐのも、治すことができるのも、食事をつくるお母さんです。加工品に極力頼らず、手作りすること。天然のだしをきちんと使って味噌汁をつくること。野菜や海藻をちゃんと食べること。なるべく白米でなく、玄米や分づき米、雑穀入り、あるいは発芽玄米入りなどのご飯を食べること。甘いものはなるべく少量にすること。そんな程度の心がけで、多くの発達障害は防ぐことができるのです。

発達障害という生きにくさを抱えた子どもたちが減れば、子どもたち自身はもちろん、先生も、他の生徒たちも楽になり、社会全体が幸せになります。食卓を預かるお母さんの責任はそれだけ重大なものなのです。「家事なんてつまらない。誰にも評価されないし」などと思いがちですが、社会を支える偉業を日々こなしているのだ、という大きな誇りを持って、食事づくりにいそしんでいただきたいと思います。

サステナ・フード教室バナー枠
体も心も健康にしてくれる☆自然食の教室 サステナ・フード教室の詳細はこちらを